【競馬】凱旋門賞惜敗。オルフェ&キズナが痛感した「世界の壁」の正体
前哨戦を快勝したキズナ(牡3歳)とオルフェーヴル(牡5歳)による、日本調教馬の悲願達成が期待された今年の凱旋門賞(現地10月6日/フランス・ロンシャン/芝2400m)。それぞれ万全の態勢であることが日本にも大々的に伝えられ、多くのファンが夢実現の瞬間を楽しみにしていたに違いない。だが――。
凱旋門賞で再び2着に敗れたオルフェーヴル。 直線を向いて早々と先頭に立ったのは、道中、オルフェーヴルの後方にいたトレヴ(牝3歳/フランス)だった。まるで昨年のオルフェーヴルが抜け出したときのリプレイを見るかのように、大外から勢いよく抜け出していった。
それ対して、馬群を割って追いかけるオルフェーヴル。ここから昨年と同じ伸びを見せればかわせるはず、と思ったが、デビュー以来4戦して負けることを知らない3歳牝馬は強かった。昨年のオルフェーヴルのようにゴール前でブレーキがかかることなく、むしろ追いすがるオルフェーヴルをあざけり笑うかのように突き放した。
「あまりの強さに啞然(あぜん)とした」
再び2着に屈したオルフェーヴルを管理する池江泰寿調教師は、レース後の会見で開口一番こう漏らした。
これが"世界"の層の厚さなのか――。完膚なきまでに叩きのめされた指揮官の表情は、不安を微塵も感じさせなかったここ数日間とは、まるで別人だった。青白く、正気を失っているようだった。
それも無理はない。池江調教師の目論見どおり、オルフェーヴルは完璧に仕上がっていた。この1年、オルフェーヴルの持ち味を消すことなく、昨年の凱旋門賞、そしてジャパンカップで見せた悪癖の修正に努めてきた。そして、前哨戦のフォワ賞(現地9月15日/フランス・ロンシャン/芝2400m)を圧巻のレースぶりで快勝した。
「これが、見せたかった姿。もう1度このレース内容ができれば、この馬は完成する」(池江調教師)
休み明けながら、強烈な強さを見せたオルフェーヴル。レース後は、1度叩いたことでさらなる上積みを見せていた。だからこそ、池江調教師は「あとは結果がついてくる」と高らかに宣言し、自信を持ってオルフェーヴルを送り出した。それが、力でねじ伏せられてしまったのだから、とてもレース前の様子を保てるはずはなかった。
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