【競馬】開場したばかりの牧場に「光」をもたらした3頭の牝馬

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

出産を終えて、仔馬とともに厩舎で過ごしているパカパカファームの繁殖牝馬たち。出産を終えて、仔馬とともに厩舎で過ごしているパカパカファームの繁殖牝馬たち。『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第14回

『パカパカファーム』(北海道新冠町)は、開場から12年経った今でこそ、誰もが知る牧場のひとつとなったが、開場当初はもちろん、知名度も実績もなかった。それでも、オーナーのハリー・スウィーニィ氏は、1年目からでも牧場を軌道に乗せたかった。そこで、彼が重点に置いたのは、繁殖牝馬選びだった――。

 社台グループが中心となり、1998年から始まった競走馬のセリ市「セレクトセール」。それまで、庭先取引(牧場での直接交渉)が中心だった良血馬を、上場することで、より多くのバイヤーにチャンスを与えようと始められた。そして、このセリ市は、初年度から1億円を超える落札馬を7頭も輩出。高額取引が頻発する市場として、世界的にも有名になった。

 2001年に開場した『パカパカファーム』も、同年に3頭の当歳馬(0歳)をセレクトセールに上場している(※生産名義はシンコーファーム)。この3頭は言うまでもなく、パカパカファームが世に送り出した最初のサラブレッドたちだ。代表のハリー・スウィーニィ氏は、当時をこう振り返る。

「初めて上場するときは、不安ばかりでした。出来たばかりの牧場の馬を購入してもらうのは、決して簡単なことではありませんからね。加えて、外国人が作った牧場ということで、『バイヤーから敬遠されるかもしれない』という心配もありました。そこで私は、なるべくバイヤーが"買いやすい馬"を上場するよう努めました。特に気を使ったのが、上場馬の母親のラインナップです」

 カサダガ、スィートシエロ、プリンセスリーマ。

 これらは、前述したセレクトセールに上場した3頭の母親である。彼女たちには、共通点があった。いずれも繁殖牝馬として、すでに重賞ウィナーを輩出していたことだ。

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