【競馬】開場したばかりの牧場に「光」をもたらした3頭の牝馬 (3ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 スウィーニィ氏が苦労の末に買った3頭の繁殖牝馬。その努力は功を奏し、2001年に上場された彼女たちの子どもはすべて落札に至った。カサダガの子(父テイルオブザキャット)は、2100万円。スィートシエロの子(父タイキシャトル)は、2500万円。注目を浴びたプリンセスリーマの子(父セカンドエンパイア)には、7000万円の値がついた。初年度の牧場としては、異例の好結果と言える。

「このときわかったのは、外国人の牧場だからといって、バイヤーの方に偏見は持たれないということ。初年度から評価してもらえたのは、今後牧場を経営していくうえで大きな自信になりました。しかし、このセリ市は成功とはいえません。3頭の競走成績はよくありませんでしたから(※3頭のうちでは、スィートシエロの子、ツルマルホマレの3勝が最高だった)。大切なのは、高額馬を出すことではなく、活躍馬を生産することなのです」

 1年に約7000頭生産されるサラブレッドのうち、GIを勝つような馬は20頭にも満たない。そんな厳しい世界で、開場したばかりの小牧場が活躍馬を出すのは、現実味のない話とも言える。

 その中でスウィーニィ氏は、2年目、3年目も世界中を巡っては繁殖牝馬を購入し、活躍馬の生産を目指した。そして、その時期にやってきた1頭の繁殖牝馬が、異例の早さでGIタイトルをもたらすことになる。

 次回は、パカパカファームに初のGIをもたらした繁殖牝馬シルバーレーンと、その子ピンクカメオのエピソードを紹介する。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
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