【競馬】良血ルーラーシップ、有馬記念で悲願の国内GI制覇を果たせるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 ところが、ルーラーシップは決してその期待に応えているとは言えない。今年も、年明け初戦のAJCCを圧倒的な強さで勝って、やっとひと皮むけたかと思われたが、続く3月の日経賞では、能力的に明らかに見劣るネコパンチに逃げ切りを許し、しかも3着に沈んだ。

 そして、香港の国際GIを制したあとに臨んだ宝塚記念で、スタートで出負けしながらオルフェーヴルの2着と健闘。いよいよ本格化か、と見込まれていたこの秋も、天皇賞・秋、ジャパンカップ(JC)と、どちらも大きく出遅れて3着止まり。期待を裏切り続けているのだ。

 スタート直後の出遅れは、最近のこの馬の定番にして、最大の敗因。先の専門紙トラックマンによれば、「ゲートに入る前はそうでもないのに、入った途端に手がつけられないほど暴れ出す」という。

 むろん、厩舎サイドでも矯正のためにあれこれ手を尽くしている。JCでは鞍上のウィリアムズ騎手が、馬のはやる気持ちを落ち着かせようとパドックを出るや、他の馬が歩いているうちにいち早く走らせ、レース前の輪乗りの場所に早めに行って、ストレスがたまらないような工夫を凝らした。それでも、ゲートに入るといつものように暴れ出し、結局出遅れてしまったのだ。

 それから、出遅れ癖が解消された様子はないという。すると、有馬記念でもここ2戦と同じ轍を踏む危険は大いにあるが、今回のそれは、まさしく致命的な問題になる。

 有馬記念の舞台となる中山・芝2500mというのは、道中、ある程度の位置につけることが、勝つための必須条件と言われている。実際、過去2年の有馬記念で、ルーラーシップは一昨年が6着、昨年が4着。得意の追い込む形ではここら辺が限界なのだろう。結果を出すためには、やはり前で競馬する必要があり、出遅れは絶対に許されないのだ。

 出遅れ癖に、気性の難しさ、加えて素質の高さに追いつけない馬体面の完成度......。そうしたいくつかの弱点を考えると、有馬記念のルーラーシップには、期待よりもむしろ不安のほうが大きい。

 そうは言っても、あらゆることがうまく嵌(はま)ったら、とんでもない強さを見せてくれそうな魅力があるのは、この馬が一番だ。香港での見事な勝ちっぷりが、その証。相手関係だとか、コースとの相性だとか、さまざまな勝因を並べたてられているが、すべてが噛み合えば、世界のトップレベルで通用するだけの能力を秘めている。騎手の誰もが一度乗ったら虜(とりこ)になってしまう素質は、なかなか見限れない。

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