佐藤寿人、通算157ゴールで育んだ「ストライカーの矜持」

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei  佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ペットの名前は、ずばり「ゴン」。そのニックネームを愛犬につけるほど憧れていた選手の偉大なる記録に、ついに佐藤寿人は並んだ。

湘南戦で今季12ゴール目を決め、J1歴代最多記録に並んだ佐藤寿人湘南戦で今季12ゴール目を決め、J1歴代最多記録に並んだ佐藤寿人 2000年にジェフ市原(現千葉)に加入以降、トータル3年間のJ2在籍期間を除くJ1実働12年間で積み上げた「157」のゴール。フィジカルが重視される現代サッカーにおいて、身長170センチという小さな身体を思えば、この数字はまさに奇跡的と言っていいだろう。

 双子の兄・勇人とともにサッカーを始めたときから、フォワードひと筋。小さいころから点取り屋の才能を周囲に知らしめてきた佐藤だったが、プロに入ってからしばらくは、苦悩の時代が続いた。

 プロデビューを飾った市原では、2年間でわずか2得点。「このままジェフにいても先は見えない」と志願して移籍したJ2のセレッソ大阪でも、森島寛晃や西澤明訓、あるいはひとつ年下の大久保嘉人といった名だたるストライカーとのポジション争いに勝てず、ピッチに立ったのはわずか13試合。しかもそのすべてが途中出場で、時にウイングバックとしてプレーすることさえあった。

 しかし、失意に満ちたこのセレッソ時代が佐藤にとって、ターニングポイントとなった。とりわけ、眞中靖夫との出会いは大きかった。鹿島アントラーズの黎明期を支えたこのベテランストライカーは、2001年にセレッソで途中出場からわずか7分間でハットトリックの偉業を達成するなど、スーパーサブとしての地位を築いていた。限られた時間のなかで結果を出す「プロの鑑」ともいえるその姿に、当時まだ20歳の佐藤は大きな衝撃を受けた。

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