「これはやばい」清本美波がゴルフをやめようと思った瞬間 「ティーグランドで手が震え、風の音やカートの動きを異常に気にしちゃう」 (3ページ目)

  • 柳川悠二●取材・構成 text by Yanagawa Yuji

清本 パーパットの前には、父はもう次のホールに向かっていたんですよ。そこまで順調だったのに、急に空気が悪くなってしまって。結局、大会の結果は......予選落ちでした。

 まだまだ18歳なんだから、失敗から学べばいいんだよ。

――親子二人三脚、いやふたりの弟も含めると四人五脚でゴルフに励んできました。ゴルフをやめたいと思ったことはありますか。

清本 一度だけ、ありますね。それは......。

 昨春の全国高等学校ゴルフ選手権の時。ちょうど広告代理店の方が美波のゴルフを見てみたいということで、駆けつけてくださるという大会でした。冬場にトレーニングを行なって、その成果を発揮する大会だったんですが、大会を前にゴルフの調子はイマイチだったんです。

 すると、大会当日、会場に着いたらどうも様子がおかしい。ティーグラウンドに立つと震えているようだった。

清本 なんだか、視界がメッチャ広がっているというか、ふだん、気にしないことまで気になっちゃうというか。「これはやばい」と思いました。

 スタートしたら、ショットがもうバラバラで。暫定球を5回打つわ、(アドレスができず)左打ちも3回した。アウトは「45」を叩いて、トータルでも「83」(113位タイ)でした。

 テクニックがどうのこうのという状況ではなかった。

――いわゆる「イップス」のような状態だったのでしょうか。

清本 いえ、イップスまではいっていないと思いますが、ティーグラウンドで手が震えちゃうんです。そして、風の音や、ギャラリー、カートの動きを異常に気にしちゃう。

 そうしたら、ホールアウト後、「練習しろ」と父は言うんです。ドライバーを「1000球打て」と。

 とにかく球を打ってなんとかするしかないと思ったんです。専門家に聞けば、画期的なアドバイスをもらえたのかもしれないですけど、体に思い出させるしかないと思って、しこたま球を打った。

 それで、練習場ではしっかりした球が打てるんです。広告代理店の方もいらしているので、予選通過はできなくとも、とりあえず2日目を頑張ろうと伝えたんです。

 ところが、本人は「イヤだ」と。話し合った結果、2日目を棄権することにしました。体調不良以外で、大会を棄権したのは初めてでした。大叩きした翌日に棄権したら、周囲の人は「逃げた」と思いますよね。だから、棄権するにしても、友だちを応援しようと彼女には伝えました。

 会場で「どうして棄権したの?」と訊かれることがあれば、自分の状況を正直に答える。それが、克服する唯一の道かなと思いました。ライバルが戦っている姿を見れば、自分を見つめ直す機会になるだろうと。

清本 それで、なんとかなったかと思いきや、次の大会となったプロの大会の練習ラウンドで、再び同じような症状に陥ってしまって。結局、(その大会の)マンデートーナメントも棄権しました。

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