渋野日向子の魅力を生観戦で実感。予選落ち危機もまさかの結末にあ然

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 初日の成績は2アンダー。オーバーパーなしのラウンドを連続「29」に伸ばし、ツアー記録を塗り替えた渋野日向子。全英女子オープン優勝が、一過性の祝い事ではなかったことを証明したばかりだった。

 それで、緊張の糸が解けてしまったのだろうか。インの10番から朝の7時20分にスタートした渋野は、なんと前半の9ホールを終えてスコアを4つも落とし、通算2オーバーに後退していた――。

苦しい展開となった2日目。パットを外して天を仰ぐ渋野日向子苦しい展開となった2日目。パットを外して天を仰ぐ渋野日向子 日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯、2日目。

 新神戸から公共交通を乗り継いでおよそ1時間。チェリーヒルズゴルフクラブに到着するや早速、その時に渋野がプレーしていたアウトの3番(パー5)に駆けつけた。

 薄いクリームイエローのポロシャツに白のパンツ。両肩、両腕を弛緩(しかん)させるように歩くので、その脱力感は両手にまで伝わり、ぶらりぶらりと長く見える。ゴルフクラブのシャフトがいかにもしなりそうな、独得の雰囲気が伝わってくる。

 ところが、スコアはさらに悪化していて通算3オーバー。手前のホール(アウト2番のパー3)で、またひとつボギーを打っていた。この段階で順位は69位タイ。記録更新が途絶える心配より、予選落ち(上位60位タイまでが決勝ラウンド進出)の心配をする段階に入っていた。 

 ゴルフ場にはちょくちょくやって来るが、トーナメントを観戦するのは何年かぶり。場違いなオジさんの訪問が、その乱調の原因であるのか。もし現実に予選落ちとなったら、それはゴルフ産業にとって大打撃を受けるんだろうなぁ......。

 いや、そんなことはなかった。この3番のロングで2mのバーディーパットを沈めると、渋野は続く4番のミドルホールでも連続バーディーを奪い、スコアを1オーバーに戻した。

 後半に強い『渋野劇場』の始まりか、と思えた。

 ところがだ。次の5番のミドルで、渋野は第2打をグリーン右の深いラフに外してしまう。落としどころが見当たりにくい、ピンに寄りそうもない難しいアプローチを予想どおり2〜3mオーバーさせてしまうと、返しのパットを決め切れずボギー。

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