2019.08.11

渋野日向子の言動を再検証。
「天才」とは言わないが「凡人」ではない

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Kyodo News

 渋野日向子(20歳)の全英女子オープンでの優勝は、ゴルフ界の”常識”も”非常識”も、ひっくり返すような出来事だった。

渋野日向子の快進撃はまだまだ終わらない 優勝争いの最中に、人垣の間を笑いながらハイタッチをして通り抜ける渋野の姿に、世界中のプロゴルファーは「アレをやるか……」と衝撃を受けたに違いない。そして、「自分にアレがやれるのか」と考えたことだろう。

 日本女子ツアーの永久シード選手である森口祐子プロは、「自分だったら、できないと思います」とし、その理由をこう語る。

「手が引っかかったら、ケガをすることもあるだろうし、タッチをできなかった人から、『なんだ(タッチを)やってくれないのか』という声が起こったりすると気になるし……。だから、そこは境目を作っておいたほうがいい、私が現役の頃はそう思っていました」

 いいプレーを見せることがプロゴルファーの仕事なのだから、プレー中にファンサービスをすることで、集中力が削がれてしまっては本末転倒だ。だから、「プレー中は申し訳ありません。ファンサービスはラウンド後にしますから」という、このゴルフ界の常識は決して間違ってはいない。

 ただ、鳴り物の音に乗せて「かっ飛ばせぇ~」と叫ぶプロ野球や、「オーレ! オーレ!」と仲間たちと声援を送るJリーグの観戦に比べて、そうしたプロゴルフ界の常識は、競技の特性を考慮したとしても、少々堅苦しいものがある。ギャラリーはそこに”疎外感”を覚えるのである。

 その常識を、渋野は打ち破ったのである。ホール間におけるハイタッチは、多くの人に好感を与えるとともに、世界中のゴルファーやメディアを驚かせ、その爽やかな笑顔と相まって、彼女のファンを爆発的に急増させることになった。しかも、彼女はプレー中に集中力を切らすことなく、優勝をしてしまったのだ。

 帰国後に日本記者クラブで会見を行なった際、「あのハイタッチは負担にならないのですか?」という記者からの常識的な質問に対しても、渋野は「無視されるほうが、よっぽど私はつらいです」と常識を超えた答えを返し、「一日、一日、ハイタッチする人数が増えていって、すごくうれしかった」と言って笑った。