全米プロ。松山英樹は「持てる者の悩み」を克服できるか

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 米ツアーの今季最終メジャーとなる全米プロ選手権が、現地時間8月7日(~10日)に開幕する(会場=バルハラGC/ケンタッキー州)。日本人選手は、小田孔明(36歳)、谷原秀人(35歳)、石川遼(22歳)、松山英樹(22歳)の4選手が参戦する。

全米プロ選手権に向けて、精力的に練習ラウンドを消化する松山英樹。全米プロ選手権に向けて、精力的に練習ラウンドを消化する松山英樹。 なかでも注目は、やはりザ・メモリアルトーナメント(5月29日~6月1日)で米ツアー初優勝を飾った松山だろう。先のWGCブリヂストン招待(7月31日~8月3日)でも12位タイという結果を残して、日本人初のメジャー制覇へ、彼にかかる期待は大きい。

 ただ今季の松山は、メジャー大会ではここまで際立った成績を残していない。4月のマスターズは予選落ちを喫し、6月の全米オープンでは35位タイ、7月の全英オープンでは39位タイに終わった。全米オープン10位タイ、全英オープン6位タイと奮闘した昨季に比べると、物足りなさを感じている人も多いだろうが、それには理由がある。松山の意識、立ち位置というものが、昨季と今季とではまったく異なっているのだ。

 昨季の松山は、チャンレンジャーだった。余計なことを考えることなく、果敢に攻めていったことがいい結果につながった。しかし今季の松山は、もはやチャレンジャーという立場ではなくなった。

 メモリアルトーナメントを勝って、松山はワンランク上のクラスに上がった。メジャーにおいても、優勝を期待される選手のグループ、つまり"ウイナーズ・サークル"に組み込まれるプレイヤーとなった。その証拠に、全米オープンでも、全英オープンでも、松山はすごくいいペアリング(※)だった。それは、米ツアーが松山を"ウィナーズ・サークル"の選手であると認め、リスペクトしているからである。

※全米オープンではリッキー・ファウラー(25歳)、ジョーダン・スピース(21歳)というアメリカ期待の若手トッププレイヤーと同組に。全英オープンでは、再びジョーダン・スピースと、当時世界ランキング8位(現在1位)のロリー・マキロイ(25歳)と一緒の組で回った。

 そうした状況にあって、松山自身、自分に対する期待感が大きくなった。加えて、昨季から米ツアーで戦ってきた松山は、その経験からメジャーで勝つために必要なことを知った。そして、今までは単なるイメージに過ぎなかった「どうしたら勝てるのか」ということが、自分の中で明確に描けるようになった。

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