【男子ゴルフ】「10cmのパットにしびれた」石川遼が2年ぶりの優勝で気づいたこと (2ページ目)
単独首位でスタートした最終日は、一時2位に4打差をつけるも、16番、17番と連続で3パットのボギー。最終ホールを前にして、同組の松村道央に1打差に迫られた。
「ショットが良かっただけに、パッティングのミスがボディブローのように効いてきていました」
迎えた最終18番のロングホール、石川と松村のティーショットはほぼ同じ位置だった。セカンドを先に打った松村は、ミスショットながらもラッキーなキックもあって2オンに成功する。
リードする石川にはレイアップする選択肢もあった。だが、松村が打つより早く5Wをクラブバッグから抜いて、残り228ヤードの距離から果敢に池越えを狙っていった。少しでも弱ければ池に飛び込んでしまう条件下で、ボールはカラーでバウンドし、ピン手前6mの位置に止まる。絶妙で会心のショットだった。
「あれで、優勝が自分に傾いたかなと思いました。そうは言っても、松村さんのイーグルパットが外れたときは、正直ホッとしましたね。ウイニングパットはわずか10cmでしたけど、しびれました。勝てなかった2年間が、あのパットを難しくさせたんだと思います」
石川には、勝利を重ねていた頃の勝負強さが戻っていた。例えば、今年10月のキヤノンオープンでは、2位で追い上げる立場ながら、いきなり1番でボギーを叩いてつまずき、その後バーディーを奪って首位に迫っても、次のホールでスコアを崩すような勝負弱さが露見していた。ところがこの日は、3番で最初のバーディーを奪うと10番からの3連続バーディーで2位との差をじりじりと広げていき、自身を、そしてギャラリーを優勝の機運に乗せて、たぐり寄せた。
また優勝争いの瀬戸際で、リスクを顧みずに2オンを狙っていく石川の積極果敢な姿勢は、やはり強い石川に必要不可欠なものだ。勝てない時期ほど石川は「マネジメントの重要性」を口にしてきたが、消極的に刻んで逆転を許すより、自ら失敗して墓穴を掘るほうが、まだ21歳と若い自分の成長を促すと、改めて自覚した。
試行錯誤の2年間だった。今年に入って幾度もパターを代えてスイングを改造し、佐々木孝則コーチだけでなく、ドラコンプロの山崎泰宏氏の指導も仰いだ。目先の結果にとらわれずに、いつかその日が来ると信じて取り組んできた努力がようやく実を結んだ。
日本時間11月12日にはアメリカPGAツアーの今季日程がすべて終了し、石川の来季シード権が確定した。
「自分が積み上げてきたもの、練習してきたものの成果が今日の試合で出て、それが自信になった。(来年に向けた)弾みになればいいなと思う」
通算10勝目という節目の優勝が、来季アメリカに活躍の場を移す石川の第一歩となる。
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