メッシ代表引退試合の相手はなぜベナンなのか 美しいお別れの裏にある生々しいマネーの現実 (2ページ目)
【印象的だった手紙のたたずまい】
今年7月19日、アルゼンチンは北中米ワールドカップ決勝でスペインに延長の末、0-1で敗れた。メッシは8得点、4アシストで大会を終えた。その2日後、彼は代表への別れの手紙を書いた。3ページにわたる、自筆の手紙だった。ただし、その時はまだ公表しなかった。しかし、8月8日、長年にわたって彼を支え続けてきた父ホルヘが68歳で亡くなると、8月31日、メッシはその手紙を公開した。
そこにはこう書かれていた。「魂が痛んだ。でも、今がその時なのだと理解した」「僕のなかは空っぽになった。もう与えられるものは何もない」「これからはほかのみんなと同じ、ひとりのサポーターになる」。
だが、公表された画像を見ると、最も印象的だったのは、手紙そのもののたたずまいだった。手書きの文章には、何度も言葉を消しては、その横にまた書き直した跡が残っていた。そしてそこには『ハリー・ポッター』の「逆転時計」をモチーフにしたペンが添えられていた。時間を巻き戻す魔法の道具だ。メッシ家は全員が『ハリー・ポッター』の大ファンであることは、アルゼンチンではよく知られている。
もちろん、現実の時間を取り戻すことはできない。代表で戦った日々も、父親と過ごした時間も。だからこそ、その1本のペンと手紙が妙に人間臭く見えた。世界最高の選手でも、どうにもできないことがある。だからこそ手紙を書き、間違え、消し、また書いたのだろう。そして最後には、自分自身で別れを決めたのだ。自筆の別れの手紙には、アルビセレステ(アルゼンチン代表)への愛と、彼の優しさと、そして長い代表生活で蓄積された疲れのすべてが表われていた。
こうしてメッシは静かに代表を去った。しかし、アルゼンチンを率いるリオネル・スカローニ監督にはひとつ心残りがあった。メッシに、本当の意味でアルゼンチンの人々に別れを告げる場を用意したかったのだ。
そこで9月15日、AFA(アルゼンチンサッカー協会)のクラウディオ・タピア会長とスカローニ監督は、メッシのために正式な「引退試合」を行なうことを発表した。代表マッチウィークの間に行なわれる国際親善試合の最終戦をそれに充てたのだ。
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