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プレミアリーグで異彩を放つアイト=ヌーリ バンリュー育ちのSBはディアスポラ戦略でアルジェリア代表に (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【サッカーのディアスポラ戦略】

 2022年カタールW杯でモロッコ代表はベスト4だった。スペイン、ポルトガルを破り、かつての宗主国フランスには敗れたが、アフリカ勢初の快挙を成し遂げている。

 カタール大会のモロッコ代表メンバー26人中14人が欧州出身者。欧州で育った選手を逆輸入しているアフリカの代表チームのなかで最も成功した例だ。2014年にスカウティング部門を創設、キャンプやフレンドリーな大会を開催して欧州のアンダー世代の囲い込みを行なってきた。

 フランス、オランダ、ベルギーを中心に、U-20までの選手を対象として「祖国代表の意義」や「文化的帰属」を説いていく。待遇改善はもちろんだが、本当の祖国はどこなのか、と問いかけているわけだ。

 アイト=ヌーリが選んだアルジェリア代表は、モロッコに比べると逆輸入の成果は表われていない。マフレズ、イスマエル・ベナセル、そしてアイト=ヌーリを呼び込むことに成功したものの、モロッコのようなチーム戦術の一貫性や整理ができておらず、世代交代も滞っているのが原因のようだ。

 ただ、すでにモロッコという例があるわけで、アルジェリアも2019年のアフリカネーションズカップではマフレズ効果で優勝している。飛躍の可能性はあるだろう。

 自国を離れて他国に定住している人々(ディアスポラ)を活用する戦略は外交、経済、文化と多岐にわたっている。そのなかで最も目立つサッカーのディアスポラ戦略は、今やアフリカ勢躍進のカギを握っている。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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