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プレミアリーグで異彩を放つアイト=ヌーリ バンリュー育ちのSBはディアスポラ戦略でアルジェリア代表に (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ポジショナルプレーとストリートサッカーの融合】

 細身のレフティ、アイト=ヌーリのプレー感覚は独特だ。極めて闘争的なプレミアリーグのなかでは例外的な「遊び」のリズムが溢れている。少年期にいくつかのクラブでトライアルに参加したが合格しなかったのは、もしかしたらストリート的なスタイルが嫌われたのかもしれない。

 欧州というよりブラジル人のようにプレーする、軽快でトリッキーな左サイドバック(SB)。この異質なSBをシティが獲得したのは興味深い。

 ペップ・グアルディオラ監督のシティは、ポジショナルプレーの最高峰として知られている。非常にシステマチックなプレースタイルとアイト=ヌーリの相性は悪そうに思えるが、シティのSBは典型的なSBではない。いわゆる「偽SB」であり、ほぼMFと言っていい。フィールドの外だけでなく内、もっぱら敵陣でプレーしている。

 その点でアイト=ヌーリは適性があり、さらに彼の即興性がシティにプラスアルファをもたらしてくれる期待があるのだろう。懸念された守備時の強度も、クラブワールドカップを見る限り問題はなさそうに見える。

 やはり新加入のラヤン・シェルキも、リヨン郊外の多文化とストリートサッカーで育った技巧派。アイト=ヌーリ以上に癖の強いタイプだが、シティのスカウトは戦術的な硬直化を避けるため、あえてバンリュー出身者を獲得しているのかもしれない。

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