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「バルサ愛」を貫き高額オファーを蹴ったカルレス・プジョル 名将ファーガソンは「恐れ入った」と脱帽 (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【大型FW相手に空中戦で圧倒】

 クラブ史上最強と言われた当時のバルサは、狡猾なプレーで相手の神経を逆なでするケースも少なくなかった。いわゆるマリーシアだ。だが、プジョルだけは基本的に真っ向勝負を挑んでいた。対戦相手を必要以上に挑発する同僚を、厳しくいさめたこともある。

 多少、後れを取ってもファウルでは止めない。最後まであきらめずに相手FWをマークし、ボールを奪う。戦うことで自らを表現する姿は感動的ですらあり、偉大なるカピタン(スペイン語でキャプテン)はライバルからも高く評価されていた。

 2008-09シーズンと2010-11シーズンにチャンピオンズリーグ決勝で敗れたマンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン監督は、「シャビやイニエスタのテクニックもさることながら、プジョルの統率力と対人プレーには恐れ入った」と語っている。

 なお、サー・アレックスは早くからプジョルに注目し、2003年夏には獲得に乗り出していた経緯がある。当時のバルサは深刻な財政難。一部では交渉成立寸前との噂も流れていた。

 しかし、プジョルはユナイテッドの高額オファーに首を縦に振らなかった。「バルサLOVE」に勝(まさ)るものはない、ということだ。

 バルサで同じ釜の飯を食ったシャビ、イニエスタ、そしてリオネル・メッシは天才肌だが、プジョルは間違いなく努力の人だ。誰よりも鍛錬を重ね、誰よりもフットボールを研究して、超一流の座を勝ち取っている。

「ハートのすべてを注ぎ込めば、勝利するかどうかは問題ではない」

 NBAで「神」と称えられたマイケル・ジョーダンの名言である。プジョルも全身全霊を傾け、バルサの、いやフットボール全体の鑑(かがみ)になった。

 一分の隙もない状況判断を駆使しながら、相手の動きを先読みして最善のポジションをとる。強靭な体幹から繰り出されるヘディングは、190cmを超える大型ストライカーとの勝負で引けを取らなかった(プジョルの身長は178cm)。むしろ圧倒した。目まぐるしい変化を仕掛けてくる攻撃にも、努力により培った敏捷性で難なく対応した。

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