【クラブワールドカップ】本田圭佑時代の混迷から頂点へ ボタフォゴはいかに復活したか (2ページ目)
【チームを救ったひとりのアメリカ人】
まるで夢から覚めたように、あとには相変わらず窮地のボタフォゴと苦い思いが残っただけだった。本田の失敗のあと、ボタフォゴはセリエBに降格。クラブ史上、最底辺に沈みこんだ。
そんなチームが変わったのは、あるひとりのアメリカ人の登場による。ジョン・テクストルだ。
ブラジルでは2021年にクラブチームの運営に関する法律が変わり、それまでは非営利団体として運営していたのが、チームを株式会社化(SAF)できるようになった。そこでテクストルは2022年3月、ボタフォゴの株式90%を買い取り、チームに4億レアル(約1億ドル、当時のレートで約120億円)以上を投資。財政難にあえいでいたチームを一変させた。
彼はすでにイングランドのクリスタル・パレスやフランスのリヨンなどのチームの株式を保有していたが、ボタフォゴを最も愛するチームとして選び、多くの資金、時間、情熱を注いだ。彼にとってボタフォゴは単なるビジネスではなく、名門に新たな歴史を築く挑戦だった。施設を一新し、レベルの高い選手を獲得し、優秀な監督を招き、何よりプロフェッショナルの精神をチームの隅々にまでもたらした。
結果はすぐに表われた。29年間タイトルから遠ざかっていたボタフォゴは2024年、ブラジルチャンピオンに返り咲いた。クラブ史上3度目のタイトルだ。これまでの悪夢を知る者にとっては、まさに夢のような出来事だった。
最終戦でサンパウロに勝利し、ライバルのパルメイラスに3ポイント差をつけてタイトルを獲得した時、ニルトン・サントススタジアムは喜びに沸き立った。長年苦しんできたサポーターたちはここぞとばかりに「カンペオン!」と雄叫びをあげた。
喜びはそこに留まらなかった。コパ・リベルタドーレス。ボタフォゴはこの南米で最も重要なトーナメントに参戦しただけではなく、最後にトロフィーまで掲げたのだ。クラブ史上初の快挙。数年前まで夢にもみられなかった現実だ。リオデジャネイロは歓喜する白と黒のユニフォームで埋め尽くされた。
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