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【チャンピオンズリーグ】パリ・サンジェルマンが見せた「定位置のないサッカー」が時代を塗り替える (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【PSGのサッカーの斬新さ】

 それだけではない。今回のPSGを語る時、触れなければならないのはアタッカー陣の多機能性である。出場選手の全員が複数ポジションをこなすことができる。右、左、真ん中とすべてこなす選手もいる。それに0トップという要素が加わる。「この選手はこのポジション」という定位置のないサッカーを実現させている。選手の高いクオリティや若手の存在も大きいが、PSGのサッカーが斬新に見える一番の理由は、選手の多機能性と、その産物である定位置のないサッカーだ。

 最強チームと優勝チームが一致しないことがしばしばあるサッカーにおいて、今季のCLはこれ以上ない順当な結果に終わった。PSGは群を抜いて強かった。サッカーのマックス値を塗り替えるパフォーマンスを披露しながら優勝した。時代を塗り替える、新しい時代の到来を予感させるような優勝だった。

 リバプール(2021-22)、マンチェスター・シティ(2022-23)、レアル・マドリード(2023-24)という過去3年の覇者も、それはそれでマックス値を更新するサッカーを披露してきたが、今季のPSGの更新の幅は、それ以上だったように見える。画期的な優勝と言いたくなる。

 シーズン前にキリアン・エムバペをレアル・マドリードに放出した時、あるいは、今季のCLのリーグフェーズのなかば過ぎまで、PSGの優勝を予想する人は少なかった。ブックメーカー各社の優勝予想でも当初は10番手前後に過ぎなかった。シーズンが深まるにつれ、チーム力は飛躍的に上昇していった。

 監督の力を思わずにはいられない。

 リオネル・メッシやネイマールに依存した単なる金満クラブから脱却させた功績も光る。好チームに変貌させながら、欧州チャンピオンにまで輝いた。

 監督自身にとっては2度目の欧州一である。ルイス・エンリケはクラブにも自分自身にも箔をつけることができた。

 フランスサッカー界にとってもこれは画期的な話だ。1992-93シーズンに始まったCLで、フランスのクラブチームがチャンピオンになるのはこれが2回目だ。初年度に優勝したマルセイユは八百長問題で、タイトルこそ剥奪されていないが、チャンピオンとして活動する権利は奪われた。以降30年余り、フランスサッカーの象徴と言えば代表チームだった。

 CLとW杯が影響し合う関係にあるとすれば、フランス代表にも追い風が吹くことになる。W杯が1年前倒しになるなら、デンベレ、ドゥエ、バルコラを擁すフランスは大本命だろう。大会後にW杯本大会が控える来季のCLの行方はいかに。攻撃的サッカーはさらに更新されるのか。目を凝らしたい。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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