【チャンピオンズリーグ】パリ・サンジェルマンが見せた「定位置のないサッカー」が時代を塗り替える (2ページ目)
【ガードを固めすぎたインテル】
完璧な崩しで先制点を奪ったPSGはその8分後。追加点を奪う。インテルが得たCKからのカウンターだった。左のライン際を走るウスマン・デンベレにクヴァラツヘリアから縦パスが通る。デンベレは切れ込むフリをして逆サイドを走るドゥエにサイドチェンジ気味のパスを送ると、次の瞬間、その胸トラップ&シュートはネットを揺らしていた。
5バックで後ろを固めたにもかかわらず、前半20分で0-2。インテルの戦略が破綻した瞬間でもあった。0-4にも感じられそうな0-2。絶望的なスコアである。どうせ2点も取られるなら、最初から攻撃的に出て撃ち合ったほうがよかったと考える人も少なくないはずだ。
決勝は90分1本勝負だ。本来なら2点負けているほうは、手をこまねいているわけにはいかない。5バックを断念し、オーソドックスな4バックに転じるべきと考えるが、シモーネ・インザーギは守備的サッカーへのこだわりがある監督だ。それを哲学にしている。その結果、インテルは5バックのまま残りの70分間を戦うことになった。
これで勝負は決まったも同然となった。案の定、PSGは後半18分にはドゥエが、後半28分にはクヴァラツヘリアが、そして後半41分には交代で入ったセニー・マユルが次々加点。インテルの5バックをモロともせず、5-0でタイムアップの笛を聞いた。
決勝で5点差がついたのは現行の33年間のCL史では初の出来事だ(これまでの最多得点差はミランがバルサを4-0で下した1993-94シーズンの決勝)。守備を固めたにもかかわらず早々に失点すると立ちゆかなくなる、守備的サッカーの本質的な矛盾を露呈させることになった決勝戦だった。
インテルはガードを固めすぎたことで、逆にPSGから必要以上に決定的なパンチを浴びた。
もっとも攻撃的サッカーと守備的サッカー攻防の歴史を振り返れば特段、驚くべき結果ではない。両者の関係において攻撃的サッカーが興隆した理由は、守備的サッカーがいくら守りを固めても守りきれなくなった経緯を見逃すことはできない。攻撃力の伸び率が守備力の伸び率を上回ってきた欧州サッカーの歴史的背景がある。
それをあと押ししたのはトータルフットボールとプレッシングサッカーで、実際に今回のPSGの勝因も、前から行くプレッシングの産物であった。
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