久保建英、移籍へのカウントダウンは始まっているのか MOMでも満足できないドロー (2ページ目)
【ファウルでしか止められず】
後半に入ると、久保は中にも入ってプレーを動かそうと試みている。縦パスを受け、起点になりかけたところ、相手ボランチに手のひらと腕で顔を抑え込まれる。相撲の技でもかけられたようで、当然ファウルになった。
久保は相手の心身を削る動きを見せていたが、味方が連動しない。特に左サイドのセルヒオ・ゴメスは、開幕直後から変わらず、久保との連係が最小限しかない。この日は、アレックス・レミーロやマルティン・スビメンディまでパスやコントロールの精度が悪かった。結果、怒涛の攻撃が発生しない状況を作り出していた。
そこで終盤、久保は中央で単身、相手ボールにプレッシャーをかけ、ミケル・ハウレギサルからボールを奪い取る。そして、ドリブルでペナルティエリア内へ強引に入って倒される。久保はPKをアピールしたが、笛は鳴らなかった。スペイン代表センターバックのダニエル・ビビアンの守備は、確かにファウルになるかどうか、ギリギリのラインだった。
逆説すれば、久保はファウル覚悟でないと止められなかったことになる。
今シーズン、久保がラ・リーガで残している数字(ゴールやアシスト)は、1、2年目を超えていない。しかし、トップアタッカーの地位は確立した。レアル・マドリード、バルセロナの絢爛豪華な選手たちを除いたら、ラ・リーガのベストイレブンに相当する活躍だろう。ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)、ドディ・ルケバキオ(セビージャ)、イアゴ・アスパス(セルタ)らも個性的だが、右アタッカーとしては彼がベストだ。
それだけに、久保がアスレティックとの緩慢なドローに満足するはずもない。
イマノル・アルグアシル監督が退任を表明したラ・レアルは、マンチェスター・ユナイテッドとのヨーロッパリーグ準決勝ファーストレグで0-3と敗れて"手負い"のアスレティックを下す、絶好の機会だった。しかも、相手はオイアン・サンセットとニコ・ウィリアムズというダブルエースが不在。その相手に後ろでボールを回すだけで時間を浪費し、攻撃の形を作れなかったことは「ホームで勝ち点2を失った」に等しい。
2 / 3