久保建英と日本代表の未来をも暗示 攻撃の仕組みを放棄したビジャレアル戦のソシエダ
4月20日、ラ・リーガ第32節。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はビジャレアルの本拠地に乗り込み、2-2で引き分けている。来シーズンのヨーロッパカップ出場権を巡る争いでは、どうにか勝ち点1を奪った。
だが、勝利にふさわしいのはビジャレアルだった。ラ・レアルを押し込み、ありあまるチャンスを作り出した。オフサイドなどによる3度のゴール取り消しがなかったら、大勝もあり得たほどだ(特に後半アディショナルタイムのゴール取り消しは誤審に近い)。
この一戦で、ラ・レアルの久保建英は前半と後半でまったく別の顔を見せている。大げさに言えば、それは久保という選手の"真実"と、日本サッカーが進むべき道までも示していた――。
ビジャレアル戦でこの記事に関連する写真を見る 前半、久保は4-3-3の右アタッカーで先発している。ラ・レアルでの定位置だ。自分たちがボールを持って、能動的に戦うプレーモデルにおいて、彼は機動力と意外性で「崩す」という役目を担っている。
この日、ラ・レアルは主力に多くのケガ人が出ており、イゴール・スベルディア、ナイエフ・アゲルド、マルティン・スビメンディというセンターラインの選手の欠場が重く響いていた。その結果、早々に失点を食らう。ビルドアップもMFベニャト・トゥリエンテスがバックラインに下がり、サイドバックが中にポジションを取る変則的構成で工夫したが、後手に回った。
攻撃はノッキングしていたが、久保は単発ながらも脅威になっていた。
18分、自陣まで戻って守備をしたあと、味方に檄を飛ばした久保は右サイドでボールを受ける。守備が得意ではないバルサ育ちの"先輩"デニス・スアレスを軽々と外すと、アルゼンチン代表ファン・フォイトに乱暴に倒されている。カウンターの機会は潰されたが、これで得たFKの対応で敵のハンドを誘い、PKからミケル・オヤルサバルが同点に追いついた。
27分、久保は距離を取って守るデニス・スアレスをあざ笑うように、左足でバーをかすめるシュートを狙い、際どいシーンを作った。40分、ビジャレアル時代の"後輩"スペイン代表ジェレミ・ピノにわざと突っ込ませ、完璧に縦に抜け出す。焦った相手のファウルでイエローを誘発した。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。