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久保建英と日本代表の未来をも暗示 攻撃の仕組みを放棄したビジャレアル戦のソシエダ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【5バックで押し込まれ続けた後半】

 44分、トゥリエンテスからのパスを右で受けると、中途半端なダブルチームを見透かし、セルジ・カルドナを置き去りに。右足のクロスは、必死のクリアでビジャレアルがCKに逃れた。

 たとえチームが不振でも、プレーの仕組みが主体的、能動的だったら、久保は輝くことができた。

 ところが後半に入り、ラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督はセンターバックをひとり増やし、5-4-1のような編成に変えた。主力不在を埋めるため、「守りありき」で"弱者の兵法"に逃げたのである。後半開始直後に相手GKの不注意からオヤルサバルが逆転弾を決めて、それは功を奏したようにも思えたが......。

 その後、ラ・レアルは押し込まれ続け、必然的に同点に追いつかれる。エリア内でアクシデントが起こる可能性は急上昇。それ以上、失点しなかったのは僥倖と言える。

 その構造は森保一監督の日本代表に近い。

 カタールW杯の森保ジャパンは、あくまで"たまたま"相手の波状攻撃が失点に結びつかず、勝利を手にすることができた。その幸運は次もあるかもしれない。しかし、それは切り株に足を取られた兎を運よく獲物にして持ち帰り、以来、運に頼った哀れな猟師の昔話に似ている。

「ボールを持つ時間を長くする」

 森保監督はカタールW杯後に語っていたにもかかわらず、今やカタールW杯時代に回帰しつつある。だが5-4-1で受け身に回るサッカーに未来はない(少なくとも、W杯優勝など噴飯ものだ)。

 なにも、すべての5-4-1が悪いわけではない。適性のある選手もいるだろう。守備ブロックを鍛え上げ、カウンターの速さや高さで勝負すべき場合もあるはずだ。

 しかし、久保のようにゴールに向かってプレーできる選手がいるチームで、そのやり方は機能しない。それどころか、「宝の持ち腐れ」を生む。日本代表でも起きている現象だ(三笘薫、堂安律、中村敬斗などをウイングバックで起用することが、どれだけ奇妙なことか!)。

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