久保建英と日本代表の未来をも暗示 攻撃の仕組みを放棄したビジャレアル戦のソシエダ (3ページ目)
ラ・レアルが前半同様に戦っていたら、結果はより悪かった可能性も十分にあるだろう。撃ち合いの末に敗れて、勝ち点はゼロだったかもしれない。しかし、ポイントを得ても、自分たちが信じてきたものを裏切った感覚が焦げとなって心にこびりつくとしたら......。
後半の久保はほとんど何もできなかった。彼に罪はない。チームが45分間もサッカーを捨て、攻撃的な能力を生かせる仕組みを放棄したのだ。
「前半、久保はラ・レアルで一番危険な選手だった。自らスーパーゴールにあと一歩だったし、(ルカ・)スチッチへのパスもゴールを意味していた。しかしハーフタイム後、後半になってチームの重心が下がったことは、彼には恩恵をもたらさなかった」
スペイン大手スポーツ紙『アス』の久保に対する寸評は、正鵠を射ていた。
久保はピッチで、ウナイ・エメリのビジャレアル、ホセ・ボルダラスのヘタフェ、ハビエル・アギーレのマジョルカを、あるいは森保ジャパンを、思い出したかもしれない。守りのウェイトが高いチームで、彼のプレーは曇る。ラ・レアルで目覚ましい結果を叩き出せたのは、攻撃主体の仕組みと、適性のあるチームメイトのおかげである。
ビジャレアル戦は、日本代表も含めた久保の現在と未来を暗示していた。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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