三笘薫から消えた「いやらしさ」 プレミアリーグ日本人対決で鎌田大地はチームを救う (3ページ目)
それは、このところずっと三笘に抱いてきた疑問だ。この試合でもそこまで、縦に出たシーンは1度もなかった。ボールを受けるとすべて内側を選択した。チームとして最深部をえぐり、マイナスの折り返しを狙うシーンはゼロだった。早い段階から真ん中を突いたため、深みのある攻撃ができずにいた。
前節のアストン・ビラ戦で、三笘は久しぶりに1度、縦突破を図った。折り返しには成功したが、対峙するマーカーにボールを引っかけられていた。きれいな折り返しが決まる頻度は激減している。積極的に縦を突く右のヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表)と比較すると、左右非対称ぶりは一目瞭然だ。かつての三笘との相違点は後半6分の、負傷で交代するきっかけとなった反則シーンに象徴されていた。
動きそのものが悪いわけではない。反応は鋭くスピーディーだ。縦への推進力も増しているかに見える。また、相手ボール時には忠実勤勉にプレスをかける。だが、相手の逆を取る動き、裏をかく動きは鈍った。狡さ、いやらしさが消え、プレーが一本調子になっている。
これまで出場機会が少なかった鎌田が活躍。逆に出場し続けてきた三笘が途中交代の憂き目に遭ったこの一戦。まさに明暗が分かれた試合だった。お互いにとってよくも悪くもこれが潮目となるのか。引き続き注視したい。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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