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三笘薫から消えた「いやらしさ」 プレミアリーグ日本人対決で鎌田大地はチームを救う

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 プレミアリーグ第31節。クリスタル・パレス対ブライトンは順位にすると12位対8位の対戦だった。クリスタル・パレスは開幕から8戦勝ちなし(3分5敗)とスタートダッシュに失敗して先行きが案じられたが、V字回復。今年に入ってからは6勝2分け2敗の好成績を残し、12位まで順位を上げてきた。

 シーズン当初のほうがスタメンを飾る機会が多かった鎌田大地は、この年明けからの快進撃に大貢献していたとは言い難い。交代出場がメインで、最後に先発を飾ったのは1月18日のウエストハム戦。ところがこの日は、最終ラインに故障者が出て、その穴を埋めるために、通常は守備的MFを務めているジェフェルソン・レルマ(コロンビア代表)が1列下がることになった。その代役として、鎌田に先発のチャンスが7試合ぶりに巡ってきたのだった。

 鎌田対三笘の日本人対決は試合の最初から実現することになった。結論を言えば鎌田はフル出場したのに対し、三笘は後半18分という早い時間でベンチに下がっている。採点でも鎌田には10段階で7に近い数字が出せたのに対し、三笘は6に届くかどうかで、明暗が分かれる格好になった。

うずくまる三笘薫(ブライトン)に駆け寄った鎌田大地(クリスタル・パレス) photo by Colorsport/AFLOうずくまる三笘薫(ブライトン)に駆け寄った鎌田大地(クリスタル・パレス) photo by Colorsport/AFLOこの記事に関連する写真を見る 試合は開始3分、ジャン・フィリップ・マテタ(U-23フランス代表)のゴールでクリスタル・パレスが先制すれば、前半31分にダニー・ウェルベック(元イングランド代表)のゴールでブライトンが追いつく。1-1の同点で迎えた後半10分だった。

 ジャック・ヒンシェルウッド(U-19イングランド代表)の突進を止めたクリスタル・パレスのCBマクサンス・ラクロワ(元U-20フランス代表)が、すかさず前方の鎌田につけたボールが起点となった。背後からブライトンMFカルロス・バレバ(カメルーン代表)が襲いかかろうとしたが、鎌田はこれを2タッチでかわす。180度身体を回転させ、バレバが足を出してくるその直前に左前方を走る左シャドーのエベレチ・エゼ(イングランド代表)に縦パスを送った。

 そのエゼがブライトン陣内にドリブルで運び、右ウイングバック、ダニエル・ムニョス(コロンビア代表)にパスを送るや、次の瞬間、スライス回転の効いたシュートがきれいな弧を描きながらファーポスト枠内に吸い込まれていった。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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