リバプールを率いて首位快走のスロット監督 プレミアリーグ初采配で好調な要因を分析する (3ページ目)
【今季最初のタイトル獲得なるか】
真のトップレベルの選手たちを指導して感じた他との違いについては、「すべての側面がより優れているのは間違いないが、誰もがトップアスリートであるということ。最大の違いを挙げるなら、フィニッシュだ。ここの選手たちのシュートは、パワーも精度もレベルがまるで違う」と話している。
だがそんな選手たちのフィニッシュも、この日はPSGの守護神ジャンルイジ・ドンナルンマにことごとく止められ、絶好調のウスマン・デンベレの得点で追いつかれてしまった。逆に第1戦ではリバプールのGKアリソンが獅子奮迅の働きを披露し、28本のシュートを打ったPSGを無得点に抑え、2本しかフィニッシュを記録しなかったリバプールがハービー・エリオットのゴールで先行していた。これが示すのは、見どころに満ちた接戦ではあったものの、内容で優っていたのはPSGだったということだろう。
スロット監督がリーグ戦とCLではほぼローテーションをしないため、緊張感の高い試合に出ずっぱりの主力に、疲れが見えていたのも事実だ。メンバーを落として臨んだFAカップ4回戦で、チャンピオンシップ(2部リーグ)で最下位に沈むプリマス・アーガイルに不覚を取ったことが、その考えを益々頑なにしたのかもしれない。
また指揮官は「来季にもっと強くなって戻ってくるだけだ」と言ったが、トレント・アレクサンダー=アーノルド、フィルジル・ファン・ダイク、サラーの主軸3人は、今季終了時に現行契約が満了するため、クラブを離れる可能性がある。そうなれば、今より強いチームを作るのは難しくなる。
それでも、スロット監督が統率するリバプールがどこまでのチームになるか、これからの展開がとても楽しみだ。今週末には、ニューカッスルとのリーグカップ決勝が控えている。昨季のチームが唯一獲得したタイトルを維持し、指揮官にとって記念すべきリバプールでの最初のトロフィーとなるか。
2月26日のホームでのリーグ戦ではニューカッスルに2-0の勝利を収めているが、この時は相手の絶対的なエース、アレクサンデル・イサクが負傷欠場していた。この25歳のスウェーデン代表を封じるために、遠藤航が起用される可能性もゼロではない。PSGとの第2戦の延長でイブラヒマ・コナテが負傷し、遠藤と交代しているだけに。
今季のイングランドの最初のタイトルを懸けた大一番は、日本時間17日午前1時半にキックオフを迎える。
著者プロフィール
井川洋一 (いがわ・よういち)
スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。
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