久保建英のマンUとの第1戦を検証 タイトなマークに屈せず、そのキックがチームの武器に (2ページ目)
【尻上がりに調子を上げて...】
一方で総合的なタレント力で勝るマンチェスター・ユナイテッドは、サッカー全体では不具合を感じさせたものの、前線にボールを持ち込み、フィニッシュする得点力が際立っていた。57分、アレハンドロ・ガルナチョがドリブルで侵入、押し下げたバックラインの前を横切るパス。それを右足で合わせたジョシュア・ザークツィーの一撃は脱帽ものだった。
先制を許したが、久保はさらにギアを上げる。マルティン・スビメンディが体調不良で欠場した中盤に下がってボールを受け、あるいは左サイドにも流れ、マンチェスター・ユナイテッドを撹乱。尻上がりにリズムを上げ、ブライス・メンデス、オヤルサバルとの好連係が光った。
そして70分、オヤルサバルからの落としを久保がミドルで打ったあとに得たCKだった。久保がキッカーとして合わせたボールを相手選手がハンド、PKを獲得した。このPKをオヤルサバルが冷静に決め、同点に持ち込んだ。
特筆すべきは、プレースキッカーとしての久保のキックだろう。
シーズン前半はセルヒオ・ゴメスがキッカーに指名されていたが、まったくハマっていなかった。セルヒオ・ゴメスはマンチェスター・シティから獲得しただけに、期待が大きく出場機会も多かったが、ポジションが確定できず、チーム戦術のなかで浮いていた。彼がベンチに座るようになり、久保がキッカーになったことで、ラ・レアルの攻撃は怖さを増した。
「ラ・レアルでもキッカーを任せてもらえるように......」
日本代表戦後、久保はそう語っていたことがあったが、ボールの軌道も鋭く、変幻になっている。久保のキックは、セカンドレグでもひとつの勝負のポイントになるかもしれない。直接のアシストにはならなくても、敵にとってはクリアするのが難しいのだ。
それにしても、久保は豪胆だ。
こうした試合では気持ちが入りすぎ、前半で飛ばし、後半にはパワーダウンするケースが多い。しかし、彼はむしろ調子を上げた。相手ディフェンスの足を使わせ、疲弊させていた。
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