検索

南野拓実の高い貢献度、前田大然の神出鬼没の動き チャンピオンズリーグ(CL)日本人選手総括 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【バイエルン守備陣を慌てさせた前田】

 ベンフィカ対モナコ戦以上に競った試合を演じたのが、バイエルン対セルティックだった。先述したデービスの決勝弾が決まったのはアディショナルタイムの後半48分。前田、旗手がチームの中心としてプレーするセルティックは、格上バイエルンに大善戦した。

 1週間前にセルティックホームで行なわれたファーストレグでは、後半4分までにバイエルンが2-0でリードする展開だった。順当な結果に終わるだろうと思われたが、そこからセルティックは踏ん張った。チームで最も鮮烈な動きをしたのは、後半20分、ポジションを左ウイングから1トップに変えていた前田だった。

 持ち前のスピードで最前線のディフェンダーと化した前田は、高速で走りに走った。FWにも守備を求める発端となったのは1990年前後にイタリアで始まったプレッシングであるが、その最新の進化形を前田のアクションに見た気がする。前田のスピードに見慣れているつもりの日本人の目にも恐ろしく速く映った。バイエルンのディフェンダーは慌て、ペースを奪われることになった。

 前田は後半34分にはスコアを1点差とする得点も奪っている。CKのチャンスからヘッドで押し込んだゴールだが、前田の神出鬼没さが欧州に知れ渡った瞬間でもあった。「なんだ、あのスキンヘッドの日本人は!」と仰天した視聴者は世界中に多かったはずだ。

 ファーストレグで見せた最前線で構える猛烈なディフェンダーぶりは、アリアンツアレーナ(バイエルンのホーム)で行なわれた折り返しのセカンドレグでも発揮された。ブレンダン・ジョーンズ監督は、前田を試合開始時から1トップで起用した。前線の流れを維持しようとした狙いは奏功する。最前線でプレッシングに最大限貢献した前田の特異性こそが、最終盤まで試合がもつれた原因だった。

 今冬、セルティックを去り、フランス1部のレンヌに移籍した古橋亨梧はこの前田の活躍をどう見ただろうか。フランスリーグはリーグランキング5位で、欧州5大リーグの一角をなし、ランク11位のスコットランドリーグよりレベルは数段高い。だが、CLのレベルはその比ではない。名門バイエルンとのガチンコ勝負は、フランスリーグで現在13位に位置するレンヌにとって、ないものねだりに等しい。古橋の移籍は栄転だったのか。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る