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ネイマールの古巣復帰にひとつの疑問 財政難のサントスはどうやって報酬を払うのか (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【名門サントスの惨状】

 確かに事実だけを見ればそうかもしれない。しかし、それはほんの表面上の事実にしかすぎない。ちょっと見方を変えると、まったく違うストーリーが見えてくる。

 ネイマールにとって、他に行き先がなかったのは確かだ。いくつかのヨーロッパのチームの名前も挙がったが、それはすべて噂にすぎない。サウジアラビアのチームでさえ必要としない彼を、ヨーロッパの強豪のどこがほしがるか。それが現実だった。今から2週間前まで、ネイマールにはなんの確かな未来もなかった。

 そこに登場したのがサントスだった。確かに唯一の選択肢ではあったが、同時にネイマールにとっては最高の選択肢でもあった。

 ところで皆さんは、最近のサントスの状況をご存知だろうか?

 サントスはブラジルの名門中の名門だが、近年は不調に苦しんでいた。危機は今から4年前くらいから始まり、この間になんと20人もの監督、60人以上の選手が入れ替わってる。

 特に2023年の年末はどん底で、チーム創立111年目にして、初めて2部に降格。おまけにクラブのレジェンドであるペレも亡くなり、チームは大きな失意のなかにあった。V・ファーレン長崎の元監督、ファビオ・カリーレ(昨年11月に退任)のもとで、どうにか1年で1部に復活したところである。

 こうした不調の根源には財政難がある。チーム一番の高給取りの選手でも、ネイマールの報酬の15%にも届かない状態だし、それさえも払えず何度も裁判沙汰になっている。

 そうなると、ここでごく素朴な疑問が湧いてくる。アル・ヒラルからの報酬とは雲泥の差とはいえ、月100万レアル(約2600万円)はかなりの額だ。普通の選手を買うことさえ難しかったサントスの、いったいどこにそんな金があるのか?

「ネイマール効果」で収入増、という期待は確かにあるだろう。

 2024年12月31日に1410万人だったサントスのサポーターの数は、現在34%増の1890万人に達したと発表された。最も可視化できるのはSNSで、サントスのインスタグラムのフォロワーは15日間で350万人から600万人に増加。ネイマールに関するコンテンツは、2月の第1週、合計5億5000万回以上再生されている。

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