バルサが急に失速したのはなぜか 不安定な守備はもはや伝統、わかっていても修正できない (3ページ目)
バルサの選手はボールプレーに優れ、攻撃に特長があり、守り抜くためには存在していない。たとえばパウ・クバルシの代わりに先発したセンターバック、エリック・ガルシアはMFも顔負けのテクニックを誇るが、対人プレーの弱さは致命的である。守りに入ったら、自ずと弱みが出る選手が多い。これは選手編成、もしくは構造上の話だ。
フリックがどれだけマーキングの大切さを説いても、あるいは優れたフィジカルトレーナーが最大限に体力を高めても、選手のキャラクターがある以上、限界がある。プレッシングのオーガナイズはできても、守る、というところでは弱点をさらけ出す。ハイラインの裏はこれからも狙われるだろうし、セットプレーでのマークの甘さは何度も指摘されることになるだろう。
わかっていても、修正には限度がある。
考えようによっては、今、起こっている失速は懸念するようなことではない。伝統には常に明と暗がある。今は後者の色が強いだけ......。
フリック監督は、バルサという歴史と対峙しながら、次の舵を切ることになるだろう。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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