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レアル・マドリードの宝はエドゥアルド・カマビンガ 万能フィジカルエリートが輝く新時代の戦術とは (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【パズルから決闘へ。新時代のキーマン】

 欧州強豪クラブ同士の対決は、現代サッカーの典型的な構図とは少し違っている。

 一般的に基調となるのは、ビルドアップ対プレッシングの攻防だ。はめにくるプレスを、可変しながら外すビルドアップ側。さらに外そうとするビルドアップには、守備側も可変で対応する。序盤はとくに相手の出方を見ての上書きの応酬になりがちだ。いわば後出しジャンケン大会。互いの可変にもはや驚きはないので、対応の正確さと速さの勝負である。

 ところが強豪クラブのなかには、この延々と続くパズル合戦に乗らないところも出てきた。全部マンツーマンでついてしまう。そうすれば可変もなにも関係がない。攻守において個々の力量に自信を持っているから、めんどうくさいパズルに付き合う必要はなく、1対1にして勝っていけばいいだろうという、傲慢とも言える自信満々の戦い方だ。

 例えば、同じCL第5節のバイエルン対パリ・サンジェルマンは、まさにそうなっていた。全部1対1にしているので各所で局地戦になる。そして、そこを制すれば一気にチャンス。どちらもCBを余らせておらず、DFラインも高いので、攻撃側はひとり抜けば即決定機を作れる。

 1対1に負けた場合の補償もせず、勝てばいいだろうという姿勢。互いの片方の手を縛りつけ、もう一方の手でナイフを握って斬りあうような試合である。ドイツとフランスで長く一強時代を築いてきたバイエルン、パリ・サンジェルマンの対決らしかった。

 アンフィールドに乗り込んだレアル・マドリードはそれよりも少し謙虚である。エムバペがいる以上、そこまでハイプレスに振りきることはできないからだろう。いつもよりしっかり守備をしていたエムバペではあるが、レアル・マドリードはリバプールのCBふたりとアンカーの3人に対して2人で対応して、自陣でひとり余らせている。ある程度引き込むつもりの守り方だった。

 この戦い方で、カマビンガが輝いたのは必然だろう。攻撃も守備もハイレベルという、いそうでいないタイプなのだ。局地戦の攻守になれば弱点がない。

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