三笘薫、忍者のごとき決勝弾 アタッカー陣中、唯一のフル出場でブライトンの勝利に貢献 (2ページ目)
【プレス要員としても外せない】
光るプレーを見せたのは、まさに一瞬だった。後半4分。試合を2-0とする、三笘にとって開幕戦(エバートン戦)以来となる今季2ゴール目のゴールを蹴り込んだシーンである。
それまでのパス回しには、ルター→ジョアン・ペドロ→ウェルベック→ジョアン・ペドロと、先制点と同じ3人が絡んでいた。そこに三笘の姿はなかった。消えている状態にあった。ジョアン・ペドロがピッチの中央でウェルベックからリターンパスを受けた瞬間には、その数秒後に三笘がゴールを決めるとは想像さえできなかった。登場の仕方は文字通り神出鬼没だった。
左のライン際から、相手のマーカーのスミスに気づかれぬよう、三笘はするすると忍者のごとく走り込むと、その鼻先にジョアン・ペドロから驚くほど正確なスルーパスが送られてきた。右足のインサイドで放ったグラウンダーのシュートがまた鮮やかだった。逆サイドのポストをめがけて、巻くように放たれた一撃は、フックラインをよく読んだゴルフのロングパットのように、グリーンの芝の上を滑らかに転がりながら、枠内にきれいに吸い込まれていった。
技術の粋(すい)をこらした丁寧かつ繊細なワンタッチ。大袈裟に言えば、これがボーンマス戦で魅せた三笘のすべてだった。光り輝くプレーはこのワンプレーのみ。その絶品の味わいを堪能しつつ、物足りなさを感じたことも事実だった。だが、繰り返すが、三笘はそれでもアタッカー陣のなかで唯一、フル出場を果たしているのだ。
活躍シーンが少なければ、並の選手は腐るものだ。自己顕示欲を抑えきれず、平常心を失って独善的なプレーに走りがちだ。そうやって自らプレーを崩していく選手をしばしば目にするが、三笘はマイペース。淡々と、飄々と、静かにプレーする。相手ボールに対してもマイボールと同じように反応する。だからプレス要員として外すことができない存在なのである。
後半14分、バレバの退場でブライトンは10人になると、ファビアン・ハーツラー監督は、布陣を4-2-3-1から4-2-3へと変化させた。5バックではなく、4-3-2でもないところがミソだった。三笘を相変わらず左ウイングに据えた4-2-3。高い位置からプレスをかけ続けた。
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