三笘薫が最後まで高い位置を張り続けたことが一因 ブライトン、マンCに逆転で金星 (3ページ目)
【5バックでも日本代表と違う使われ方】
そんななかで三笘は後半45分までプレーした。アディショナルタイムに入ろうかという時点でヤクブ・モデル(ポーランド代表)にポジションを譲った。
ハーツラー監督は前任のデ・ゼルビより森保似だと前述したが、三笘の使い方は森保監督とまったく違う。三笘を3-4-2-1のウイングバックで起用する森保監督に対し、ハーツラー監督は5-2-3の左ウイングで使う。それぞれの基本ポジションには20メートル以上の差がある。三笘がウイングバックとしてプレーしたならば、ジョアン・ペドロの同点ゴールは、生まれていただろうか。ファン・ヘッケのサイドチェンジを高い位置で受けて、対峙するウォーカーと1対1になっていただろうか。
三笘がウインガーとして最後まで高い位置を張り続けたことと、この逆転劇は密接な関係にある。三笘のプレーを採点するならば6.5~7となる。
もっともウォーカーとの1対1で、縦に抜ける機会は1度もなかった。右足のアウトで中央にパスを送るプレーは確かに光っていた。周囲とのコンビネーションも上々だった。だが、ウインガーとしての価値は縦抜けを決めるか決めないかに左右される。
イングランド代表の右SBを向こうに回し、2度、3度と縦抜けを決めたとなれば、ウインガーとしての商品価値は著しく上昇する。そのチャンスは実際、何度かあった。ウォーカーに対し、客観的に見て、三笘は勝てそうなムードにあった。この大一番で、三笘にアタッカーとしての野性味を発揮してほしかったというのが正直な感想だ。
惜しい気がするが、逆に言えば、縦抜けを決めなくても7に近い採点を得られそうな点も三笘の魅力だ。ひと言で言えばクレバー。相手ボールへの対応も完璧だ。毎試合、ほぼフルタイム出場を果たす理由である。試合後、三笘がグアルディオラに声をかけられる日は訪れるだろうか。次戦に期待したい。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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