プレミアリーグ最注目選手はチェルシーのコール・パーマー 驚異的な得点関与数の要因は? (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【サイドのプレーメーカー】

 右サイドを主戦場としているパーマーは、ウイングプレーヤーでもあるが、サイドを起点とするプレーメーカーに近い。

 身体操作が独特だ。右方向へドリブルしながら、瞬間的に体を開いて左足のインサイドで左方向へ強いシュートを決めたこともある。足が長いからできるのか、股関節が特別に柔らかいのかよくわからないが、意外な方向へボールを蹴り出せる特長がある。シュートだけでなくパスでもこの独特なキックが効果を発揮している。

 右サイドからペナルティーエリア内の味方へ、斜めの低いパスをよく通している。普通の選手ではまず出せないパスコースだ。そのコースを見つける眼のよさはあっても、そこへ蹴り出せないと「ありえない」選択となるのだが、そこを蹴れるパーマーのパスはそれだけ相手にとっては意表を突かれるものとなっている。

 浮き球のピンポイトパスも得意。動作自体はゆったりしているのだが、ボールを止めてから蹴るまでが速い。止めたボールを置き直さない。ファーストタッチで自分の場所にピタリと止められている。多少ずれても、身体操作で調整してワンステップで蹴り出せる。アメリカンフットボールのタッチダウンパスみたいだ。

 サイドのプレーメーカー、チャンスメーカーは、かつて多くのチームで活躍していた。典型はデビッド・ベッカム(※マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリードで1990~2000年代に活躍)で、右サイドに位置していたがドリブル突破はあまりせず、もっぱらタッチライン際からのロングクロスが武器だった。

 ベッカムのようなタイプは「クロッサー」と呼ばれ、2トップシステムのサイドはだいたいクロッサーが起用されていた。ベッカムは右利きの右サイドで、大きく曲がるクロスボールのほかに、ストレートのボールもあり、精度はまさにピンポイントだった。

 パーマーと同じ、サイドと利き足が逆のタイプとしては、ルーマニア代表のエースだったゲオルゲ・ハジ(ステアウア・ブカレストほかで1980~90年代に活躍)、イングランド代表でベッカムの先輩だったクリス・ワドル(トッテナム、マルセイユなどで1980~90年代に活躍)などが挙げられる。

 現在はサイドにパサーを配置するケースは少なくなり、パーマーもドリブルを駆使したウイングプレーもできる。ただ、例えばジェレミー・ドク(マンチェスター・シティ)のような生粋のウイングプレーヤーではない。シティには小型のパーマーともいえるフィル・フォーデンもいる。昨シーズンのプレミアリーグ年間最優秀選手であり、サイドにパーマーの居場所はなかったわけだ。

 シティでレギュラーポジションを確保できず、より多くの出場機会を求めてチェルシーへ移籍したのは結果的に大正解だった。チームが求める役割をこなすというより、チームがパーマーの技量についていく感じになっていて、FCパーマー化していたのはチームにとっては問題かもしれないが、パーマー本人にとってはプレーしやすい環境だったに違いない。

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