世界最強アルゼンチン代表に小柄なDFの伝統 高身長化が進むなかなぜ活躍できる?

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第9回 リサンドロ・マルティネス

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、アルゼンチン代表でマンチェスター・ユナイテッドのDFリサンドロ・マルティネスを紹介。身長175cmと高さのないセンターバックが活躍できる背景とは?

【CBはサイズがモノを言うポジション】

 コパ・アメリカ2024に優勝したアルゼンチン。コパ・アメリカ連覇、その間にカタールW杯優勝、黄金時代を築いている。

 リオネル・メッシの存在感もさることながら、アルゼンチンの特徴は何といっても堅守だ。クリスティアン・ロメロと組む左センターバック(CB)リサンドロ・マルティネスは身長175㎝しかない。現代のCBとしては例外的な低身長であり、所属のマンチェスター・ユナイテッドのなかでもひときわ小柄なだけでなく、プレミアリーグで最も背の低いCBである。

アルゼンチン代表、マンチェスター・ユナイテッドのCB、リサンドロ・マルティネス photo by Getty Imagesアルゼンチン代表、マンチェスター・ユナイテッドのCB、リサンドロ・マルティネス photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 今やCBは185~190㎝が当たり前だ。マンチェスター・シティのセンターフォワード、アーリング・ハーランド(194㎝)と並ぶと、まるで大人と子どもである。ただ、リサンドロ・マルティネスはハーランドを完封したことがある。ちなみにアヤックスで鉄壁のコンビを組んでいた相方のユリエン・ティンバーも179㎝とCBとしてはやはり低身長の部類。当時、ドルトムントのエースだったハーランドは、リサンドロ・マルティネスとティンバーに挟まれて、何もできなかったのは印象的だった。

 CBはサイズがモノを言うポジションであるのは、空中戦だけでなくリーチも影響するし、体が大きくてパワーがあれば相手FWとのフィジカルコンタクトで優位だからだ。小柄なCBにはスピードという武器があるとはいえ、高さ不足、パワー不足を補うのはかなり難しいと考えられている。FWに得点感覚、MFにボールコントロールとアイデアが天性の才能として備わっていなければならないように、体格はCBにとって才能なのだ。

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プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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