三笘薫のドリブルを考察「反発ステップ」「軸足リード」「万事理詰め」で次々に突破 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【軸足リードのボール運び】

 ボールの持ち方は、大別すると、ボールを自分の体の前に置くタイプと、体の下に置くタイプがいる。

 前に置くタイプは右利きなら、基本形は右足が前で左足が後ろ。ボールは右足の前だ。ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)や左利きなら堂安律(フライブルク)がこのタイプ。

 一方、ボールを体の下に置く場合は、左足が前、右足が後ろ(右利きの場合)。ボールは後方にある右足の前で、懐に抱え込むような持ち方になる。三笘は明らかにこちらのタイプで、ラミン・ヤマル(バルセロナ)やジャック・グリーリッシュ(マンチェスター・シティ)も典型的な軸足リード型である。

 軸足リードの利点は、相手からボールの距離が遠くなること。体の前に置くのと比べると、ボール2、3個分は相手から遠くなる。このボール2、3個分の距離内でボールが動いていても、まだ相手の足は届かない。実際に左右どちらかにボールをプッシュして抜きにかかる前に、相手を観察する時間をより長くとれるのだ。相手の位置や動きに応じて左サイドを縦にぶっちぎるか、カットインで中へ行くかを決めるのが、三笘方式の定番になっている。

 また、加速もしやすい。例えば、体の前に置くタイプが右足の前にあるボールをプッシュしてスピードを上げる場合、右足でボールをタッチしたあとは右足がそこで止まる。瞬間的に右足が詰まる感じになる。一方、三笘のように懐からボールを前へ動かすと、右足の動きを大きく使えるので、ボールを押し出した右足をそのままスムーズに踏み出しての加速ができる。

 ボールを体の前に置くか、体の下か、どちらが良いとは一概には言えないが、後者の三笘はその利点を最大限に使っている。足が長くて可動域も大きいので、軸足リード型に向いているのかもしれない。

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