三笘薫のドリブルを考察「反発ステップ」「軸足リード」「万事理詰め」で次々に突破 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【万事理詰めの攻略】

 ドリブラーにもさまざまなタイプがいるが、三笘は頭脳派といえるだろう。万事理詰め。もちろんドリブラーらしい本能的なプレーもあるけれども、基本的には自分の手筋に持ち込んで攻略する。そのための筋書きづくり、舞台設定が周到だ。

 強力なウイングは、相手チームからふたりがかりのダブルチームで対処されることが多くなっている。複数の相手と対した時、三笘は必ず対峙する相手の奥を見る。ひとり目を抜いたあとのカバーがどう動くか。スペースはどれくらいあるか。それらを確認したうえで、ふたり目への対策込みでひとり目を抜きにかかっている。

 三笘らしいのは複数の相手と対した場合、例えばふたりが相手なら1対2ではなく、2回の1対1に分解するところ。3人ならば1対1×3。誰と勝負するかをまず決める。

 すると、往々にしてふたり目に油断が生じる。1対1に分解した時点で、ふたり目はまだ自分の出番ではないと思ってしまうことが、一流のプロでもわりとよくあるのだ。その状態にしてしまえば、ふたりをいっぺんに相手にするのではなく、まさに1対1で順番にやっつけていけていく手順が組みやすくなるわけだ。

 ふたりを引きつけてシンプルにフリーの味方へパスすることも多いが、順番にひとりずつ抜いていくプレーも多い。その際の段取りの良さ、ドリブルのルートを見つけ出す自前のナビゲーション能力こそ、あまり類のない三笘らしさではないだろうか。

著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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