橋岡大樹が実践する「海外サッカーでの生き方」 モードを切り替え、簡単に謝らず、しっかり言い返す (4ページ目)
【ヨーロッパモードへの切り替え】
では、橋岡大樹は"悪人"に変わってしまったのか。6月のシーズンオフの帰国時には郷里の浦和が「大好きだ」と言い、子どもたちとのサッカー教室を実施。笑顔で一緒にボールを追いかけるこの存在が。
橋岡大樹は6月のオフに浦和でサッカー教室を行なった photo by Yoshizaki Eijinhoこの記事に関連する写真を見る「僕自身、性格が変わることはないと考えています。周囲の選手たちがどう思っているかはわかりませんが、そう簡単には変わりたくても変われないでしょう。
ただ、あるのは切り替えです。ヨーロッパでのモードへの切り替え。軽く見られないようにするため、普段なら相手に言われて反論したくないような場面でも、とりあえず言い返さなければならないと考えます。そして、意図的に言い返すようにしています。相手にどう思われても構わないと自分に言い聞かせるんです」
厳しく、厳格な欧州での日々。だからこそ橋岡は日本代表でのプレーを楽しみにしている。「常に周囲がレベルアップしてくる競争の場」としつつ、楽しみでもあるのだと。きっとそれまでは感じ取ることのできなかった、何気ない楽しみだ。
「日本代表でプレーする時は心が少しほっとするんです。言葉がちゃんと通じて、ひとつの冗談を心から共有し合って笑える。その言葉のコミュニケーションの部分が楽しいです」
欧州での厳しい環境で培った強さと、日本選手としてのアイデンティティが融合する場所。チームメイトとの会話、戦術の理解、そして共通の目標に向かってチームとして一丸となる感覚もある。
そうやって選手たちが癒やされている。だからこそ、日本代表の主軸たる欧州組たちのパフォーマンスに期待してもいい。橋岡の話を聞き、新たな日本代表のチーム像を見た思いもした。
(おわり)
橋岡大樹
はしおか・だいき/1999年5月17日生まれ。埼玉県出身。浦和レッズのアカデミーで育ち、2018年にトップチームに昇格。DFで活躍しJ1で74試合出場4得点。2021年1月にベルギーのシント=トロイデンVVへ。4シーズンプレーしたのち、2024年1月にイングランドのルートン・タウンFCに移籍して活躍している。各年代の日本代表にも選ばれてきて2021年には東京五輪に出場。2019年以降A代表でもプレーしている。
著者プロフィール
吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)
ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。
【写真】ハーランド、フォーデン、サカほか多数 欧州サッカートップスターの美しきパートナーたち
4 / 4