橋岡大樹が海外でプレーする際、チームメイトに嫌がられても「あくまで強気な態度で臨んでいる」理由 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【いい人として見られて終わるべきじゃない】

 なぜ、そこまで? 故郷・浦和を離れることにマリッジブルーのような心境になり、出発直前のドタバタで、欧州のことすらまったく想像していなかったはずなのに、なぜ橋岡は「強気で行きすぎて嫌われるほど」になったのか。

 そこには周囲の選手たちの助言もあった。

「日本を発つ前に、鈴木優磨選手(現・鹿島アントラーズ。2019~21年までシント=トロイデン所属)からアドバイスを受けたんです。試合で対戦する機会はあったんですが、直接の面識はありませんでした。でも誰かから連絡先を聞いてくれたのでしょう。『お前、シント=トロイデンに来るんだって?』と。そして、簡単に試合に出場できるわけではないとか、チームについて様々な説明をしてくれました」

 さらに一番大切なこととして、こう言われた。

「現地に行って軽く見られないこと。最初の印象がとても重要。最初から"いい人"として見られて、それで終わるべきじゃない。その人たちと永久に一緒にいるわけではないと」

 シント=トロイデンは多くの日本人プレーヤーが在籍することでも有名だが、ほかの選手からもアドバイスを受けた。伊藤達哉(2019~22年に所属。現・マクデブルク/ドイツ)はこう言っていたという。

「まず、自分のよさであるアグレッシブなプレーを、何を言われても出し続けたほうがいい」

 果たして、橋岡は性格を変えて"悪人"になったのか。そういうことではない。

「考え方の切り替えをしたということです。そもそもヨーロッパの人たちって、うわーっと言い合いをしても、その後まったく気にかけていないことが多いですから。他人に気を払っていないというか」

 橋岡の行動の正しさは、結果によって証明された。

 ベルギーでは2021~24年1月までの間に91試合に出場。2ゴール12アシストの結果を残した。2023年からは日本代表への招集機会も増え、ドイツに4-1で勝ったあの伝説のヴォルフスブルクの試合でも、後半39分から出場を果たした。

 結果、世界最高峰のイングランド・プレミアリーグのクラブからオファーが届くのだ。

後編「橋岡大樹が実践するイングランドでの生き方」へつづく>>

橋岡大樹 
はしおか・だいき/1999年5月17日生まれ。埼玉県出身。浦和レッズのアカデミーで育ち、2018年にトップチームに昇格。DFで活躍しJ1で74試合出場4得点。2021年1月にベルギーのシント=トロイデンVVへ。4シーズンプレーしたのち、2024年1月にイングランドのルートン・タウンFCに移籍して活躍している。各年代の日本代表にも選ばれてきて2021年には東京五輪に出場。2019年以降A代表でもプレーしている。

プロフィール

  • 吉崎エイジーニョ

    吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)

    ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。

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