世界のサッカーを変える新しいアイデアは南米から始まった「ロスタイム表示」と「マルチボールシステム」 (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【ロスタイム表示で観客も安心】

 当時のサッカーでは、今のように長いアディショナルタイム(当時は、「ロスタイム」という言葉が一般的だった)が取られることはなかった。多くの試合は45分ぴったりに笛が吹かれたし、ロスタイムがあっても2、3分程度だった。

 だが、ロスタイム表示がなかったので、ロスタイムが何分あるのか誰にもわらなかった。審判員同士の通信システムも使われていなかったから、ラインズマン(線審。現在のアシスタント・レフェリー=副審)もロスタイムが何分なのかわっていなかったはずだ。

 本場ヨーロッパでも状況は同じだった。だが、南米大陸にはレフェリーが指でロスタイムの長さを示すという習慣があったのである。

 それからしばらくして、ヨーロッパでも第4審判がボードを使ってロスタイムを示す方式が取り入れられた。そして、日本でもロスタイム表示が行われるようになり、観客も安心して試合を見ていられるようになったし、選手たちは残り時間を意識しながらプレーすることができるようになった。

 前回コラムでご紹介したバニシングスプレーと同様、南米大陸での"発明"が世界のサッカーを変えた一例だ。

 ただし、最近のように長いアディショナルタイムを取るようになると、再びいつ試合が終わるのかわからなくなってしまった。試合の終盤は、選手の疲労がたまっているので倒れ込む選手も多いし、1点を争う試合では反則などを巡ってトラブルになることも多い。アディショナルタイムが「12分」と表示されていても、その12分の間にトラブルが起こると時間はさらに延長されるから、結局、いつ試合が終わるのかわからなくなってしまうのだ。

「12分」が経過した瞬間に再び残り時間を表示するか、ラグビーのように場内やテレビ画面の時計をレフェリーの時計と連動させて、残り時間が「ゼロ」になった瞬間にタイムアップにする必要があるのではないだろうか?

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