ジャマル・ムシアラがユーロ2024で覚醒中! ドイツの10番を背負う21歳が得点ランクのトップに (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【ムシアラが注目する選手はあの16歳】

 決勝トーナメント・ラウンド16のデンマーク戦。開始4分に左CKをドルトムント所属のニコ・シュロッターベックが頭で合わせ、ドイツが先制したかに見えた。試合はドルトムントで行なわれていたため、スタジアムは大いに盛り上がった。だが、これはファウルの判定。

 その後もドイツペースで進み、ユリアン・ナーゲルスマン監督は「すばらしい冒頭の20分間。この戦いができればどこにでも勝てる」と相手を圧倒する時間帯を過ごしたが、得点はならず。前半35分ごろには激しい雷雨で25分ほど試合が中断。稲光が目視でき、スタジアムの天井からも滝のように雨が落ちてくるなか、選手たちはロッカールームに下がって再開を待った。

 後半はふたつのVARが試合の流れを左右させた。ひとつ目は48分のデンマークのゴール取り消し。後方からの縦パスにトーマス・デラネイがつぶれ、ヨアキム・アンデルセンが決めたように見えたが、これはオフサイドの判定。わずかにつま先が出ていたことが確認された。

 直後の51分、今度はドイツの攻撃でダビド・ラウムの左クロスにアンデルセンが自陣PA内で対応。これが再びVARによってハンドの判定となりPK。カイ・ハフェルツが蹴ったPKは53分に決まり、アンデルセンはわずか数分の間に天国から地獄へ突き落とされてしまった。

 そしてこの日、2点目を決めたのはムシアラだった。

 68分、シュロッターベックから左サイドに出たロングボールに抜け出し、マークについていたアンデルソンを巧みに振りきり、ポジションを直したGKカスパー・シュマイケルの位置を見定めて右足でゴール右隅に沈めた。

 ムシアラは今大会3ゴール。ジョージアのジョルジュ・ミカウターゼ、スロバキアのイヴァン・シュランツと並び(6月30日時点)、得点ランクトップに立った。

 確かな存在となりつつあるムシアラが注目するのは「あの若手」だと、ミュンヘンの地元紙『AZ』 が伝えている。

「スペインのラミン・ヤマルが好きなんだ。1対1に強くて、勇敢で、試合を美しくする選手。そういう選手が好きなんだ」

 くしくも次の準々決勝、ドイツはスペインと対戦する。21歳・ムシアラと16歳・ヤマルの若手対決にも期待したい。

プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

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