検索

ユーロ2024のベルギーに圧倒的存在感のウイング 誰もジェレミー・ドクを止められない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【これほどエネルギーに満ちた選手を見たことがない】

 鮮明になったのは、ベルギーには優秀なウイングが存在するということだった。ドクはもちろん、ルケバキオ、バカヨコのウイングプレーも高水準にあることが判明した。

 2戦目のルーマニア戦には、4-2-3-1の左ウイングにドク、右ウイングにルケバキオが先発で起用された。敗戦で大会をスタートしたショックは、この試合の開始2分で消えた。ドクが1トップのルカクにボールを預けると、そのポストプレーからティーレマンスがミドル弾を蹴り込み、初戦でウクライナを3-0で倒したルーマニアに先制した。

 デ・ブライネの追加点が決まったのは後半35分。それまで1-0の状態は維持された。しかし、ベルギーファンにとっては楽観的になれる、ルーマニアとの差を感じさせる内容だった。

 主役はこの日もドク。ひとり、圧倒的なパフォーマンスを最後まで見せつけた。試合はまさに「ドク劇場」と化したのである。止めることができないドリブル。ふたりがかりでマークにいっても潰すことができない。縦にもいくし、内にも切れ込む。何度ボールを受け、相手に仕掛けていったことか。1試合でこれほど多く「勝負」する選手を見たことがないと言いたくなるほど、見せ場を多く作った。なかでも、内へ切れ込み、ポスト役であるルカクに預けるコンビネーションが秀逸で、得点の可能性を抱かせるプレーだった。

 さらに驚くべきは、フルタイム出場を果たしたことだ。ドクの馬力はアディショナルタイムを含めて98分維持された。筆者の長い観戦歴のなかで、ここまでエネルギーに満ちあふれた選手を見たことがない。

 左利きの右ウイングのルケバキオも上々だった。ドクが173センチと小柄なウイングであるのに対し、ルケバキオは187センチと大型だ。左足でボールを操作しながら縦に勝負に出るボール操作術は、フランスのウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン)に似ている。その縦に引っ張る力が攻撃に推進力をもたらしている。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る