クリスティアーノ・ロナウドの育ての親が語る「生まれながらのピッチの王様」 ポルトガルのユーロ2024制覇も視野に (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「育ての親」が語った少年時代】

「メンタルお化け」

 ロナウドはそう言われるが、「勝利への貪欲さ」という点で、怪物的と言える。そうでなかったら、時代を背負う選手にはなっていないだろう。

 今から20年ほど前、ロナウドが育ったスポルティング・・リスボンのアカデミーで、彼の原点を辿っていた時のことだ。

 石段のような雲が低く立ちこめた土曜日、アカデミーでは育成年代の選手たちの試合が行なわれていた。地元紙が「クリスティアーノ・ロナウド二世」と紹介したファビオ・パイムという14歳の少年のプレーを取材する予定だった。しかし、彼はベンチで試合を終えた。

 そこで「ロナウド育ての親」と言われ、当時はスポルティングのBチームのヘッドコーチを務めていたリオネル・ポンテに話を聞いた。

「パイムがロナウド二世? 似たような才能はあるけど、ホンモノはそんな簡単に見つからない」

 ポンテは、含みのある渋い笑いを浮かべて言った。

「ひとつ言えるのは、ロナウドは特別な選手、ということだよ。彼のような選手は育てられない。生まれてくる。気づくと、誰もが一目置いていた。お祭り男というか、自然に人を集める雰囲気も持っていたし、やんちゃな人間たちの心を瞬く間につかんでしまった。技術、体力はあったけど、それ以上に"生まれながらの王様"と言うかね。彼だけのルールで行動できた。

 ポルトガルサッカー史上のレジェンドと言える(ルイス・)フィーゴだって、ロナウドと比べれば凡庸な選手だった。私はフィーゴとユース時代に対戦したことがあるが、はっきり言って、ずんぐりとした普通の選手という印象だったよ。確かにフィーゴは19歳までに驚くべき進化を遂げたが、19歳のロナウドはそれを軽く凌駕していた」

 パイムはその後、チェルシーに移籍したが、各国のクラブを転々とし、目立った経歴はなく、静かに現役を終えている。彼以外にも「ロナウドの再来」は数多く現われた。しかし、同じような運命を辿っている。

 ロナウドは、不世出の選手と言える。レジェンドの中のレジェンド。リオネル・メッシと同時代に活躍した時代を彩る別格のスーパースターだ。

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