久保建英の能力開花にも貢献 レバークーゼン、アーセナル...バスク人監督が成功する理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「集団で戦う」という精神】

 他にも、アンドニ・イラオラ監督はプレミアリーグのボーンマスで名声を高めている。元スペイン代表監督のフレン・ロペテギも、来シーズンはウェストハムの監督就任が決定。オサスナを率いたハゴバ・アラサテ監督は昨シーズンのスペイン国王杯ファイナリストで、ホセバ・エチェベリア監督はエイバルを1部昇格に手が届くところまで引き上げている。フアン・マヌエル・リージョは現在、マンチェスター・シティの参謀だ。

 レアル・ソシエダを率いるイマノル・アルグアシル監督を忘れてはならない。CLベスト16は、クラブ規模を考えたら快挙。久保建英の能力を開花させ、その人心掌握は特筆に値する。

「バスク人選手が特に優れているのは、『集団で戦う』という精神ではないでしょうか」

 バスク代表監督(FIFA未公認だが、バスク人指導者に与えられる最高名誉職で、他にハビエル・イルレタ、ハビエル・クレメンテなどが務めた)を10年以上にわたって務め、「バスクサッカーの父」とも言われるミケル・エチャリは言う。エチャリはSportiva(スポルティーバ)のご意見番としてもおなじみだが、アロンソ、エメリ、アラサテ、エチェベリア、リージョなどとは"師弟関係"にあり、監督養成学校の教授も務めてきた。

「サッカーは11人対11人の戦いです。それぞれが持ち場を守り、足りない部分を補い合い、最後まで死力を尽くす。その様子が、"バスクサッカーは強く、激しく戦う"と映るのかもしれません。ただ、本質は集団性を重んじる点にあります。監督は選手たちを束ね、決断できるか。そこでの団結力こそ、戦いのモットーとすべきです」

 監督は、選手をひとつにできるか。リーダーの人間性はチームに反映する。凡将のもとで選手は輝かない。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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