久保建英の能力開花にも貢献 レバークーゼン、アーセナル...バスク人監督が成功する理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【いわゆるラテン気質とは無縁】

 サッカースタイルも、英国の影響を受けている。昔は、大きな体躯を生かしたキック&ラッシュが主流だった。そもそも「アスレティック」という名称は英語表記だ。

 いわゆるラテン気質ではない。イメージ的にはドイツに近く、謙虚さを美徳とし、規律正しく真面目。たとえばスペイン南部のアンダルシアには「盗まれた奴が間抜け」という文化があるが、対照的だ。

 バスク人監督は、とにかく実直に物事に向き合う。その姿勢こそ、人を束ねるリーダーの資質か。自分の損得を考えるよりも、集団を重んじる。
 
 その生き様が、「バスク人監督全盛時代」につながっているのかもしれない。

 ホセ・ルイス・メンディリバル監督は、バスクを象徴する名伯楽だろう。昨シーズンはセビージャをヨーロッパリーグ優勝、今シーズンはギリシャのオリンピアコスをカンファレンスリーグ優勝に導いている。どちらもシーズン途中の就任だが、堅実にチームを立て直した。日本では乾貴士の力を最大限に引き出したことで有名か。

 レバークーゼンのシャビ・アロンソ監督は新時代の名将候補筆頭だろう。ドイツ、ブンデスリーガで無敗優勝、ポカール(ドイツカップ)でも優勝。ヨーロッパリーグは決勝で敗れたが、逆転劇の連続でスペクタクルな内容だった。

「バスクの観客は、終了のホイッスルが鳴るまで戦うことを求める。その風土が、選手を育てる」

 現役時代にアロンソは語っていたが、リバプールでの伝説的逆転劇(2004-05シーズンのチャンピオンズリーグ/CL決勝。ミランに前半で0-3とリードされるも、同点に追いついてPK戦で勝利を収めた)は生き方の賜物で、その勝負精神は監督になっても変わっていない。

 他にもバスク人監督は多士済々である。

 ミケル・アルテタ監督はアーセナルを率い、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督と比肩する攻撃的サッカーで2年連続、し烈な優勝争いを展開。冨安健洋の多彩なセンスも、日本代表にいる時以上に引き出している。ウナイ・エメリ監督はアストン・ビラを率いてCL出場権を獲得。執拗なまでの研究的考察で、戦術家として極まりつつある。エルネスト・バルベルデ監督はアスレティックを率い、今シーズンは国王杯優勝。バルベルデは民族的にはバスク人ではないが、バスクで幼少期を過ごし、アスレティックで選手として活躍し、「バスク人よりもバスク人」と言われる。

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