リバプールで奮闘した遠藤航を風間八宏が高評価「考えることによって進化できているのがすごい」 (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【プレーが速くなりリバプール仕様に】

「わかりやすく言えば、遠藤が持っている"時計"が以前と比べてより精密になったということですね。

 シュツットガルトにいた時は、遠藤の時計に誤差はなかった。周りが遠藤の時計に合わせていましたが、リバプールという速さのなかに入っていった時、当然ですが、最初の頃はその時計に誤差が生じます。ところが、いつの間にか、その速さを身につけました。

 たとえば、現在の遠藤のプレーを見ていると、以前よりも正確にボールを止めるようになっています。正確に止めるとは、すぐに次のプレーに移れる、すぐ蹴れる場所にボールを置けるようになっているということです。それによって、相手が近づけなくなり、相手の足を止められるようになった。そうやって遠藤の時計が速くなり、リバプールの速さのなかに合わせられるようになりました。

 あるいは、遠藤が得意とするボールを奪うプレーにしても、速さが増しています。シュツットガルト時代と同じ速さだとリバプールの時計に合わせられないので当然の話ですが、リバプールでも自分の特長を出せるようになっていること自体、速さが増した証拠と言えます。

 遠藤の場合、前回お話したアーセナルのライスほどのスタンスの広さはありませんが、その分、追い詰め方でスタンスを広くすることができています。その速さもアップしているので、ボールを奪うという点では、意外とライスよりも遠藤のほうがスタンスは広いかもしれません。

 また、パスコースを切るにしても、今は縦を切るべきなのか、横を切るべきなのか、あるいは斜めを切るべきなのか。その判断を走りながら見極められる能力が、シュツットガル時代よりも格段に上がっている印象です。それも、速さのひとつです。

 若い選手の場合、成長過程でそういった能力が自然と身につくのはよくある話ですが、遠藤の場合、考えることによって進化できているのがすごいところだと思います。逆に言うと、これが日本人の特徴と言えるかもしれません。日本人の場合、まだ考えないで成長できる選手はほとんどいませんから、そういう意味では、遠藤は日本人選手の見本とも言えるでしょう」

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