38歳の丹羽大輝、スペイン4部でプレーする日々に「今日もサッカーができる。その事実に、自然と心が踊る」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 これらはすべて、年齢に対する危機感があってこそ。年齢にとらわれず、自らは心も頭も「一周まわってフレッシュに」を保ちながら進化を続けている一方で、世の中はそれを簡単には認めてくれないことも重々理解しているからだ。

「外国籍選手としてプレーする38歳が、試合に出られなくなったら即アウト。ピッチに立てばやれる自信があっても、そのピッチに立つこと自体が大変になってくるのが年齢という壁だと思う」

 もっとも、その危機感も切羽詰まったものでは決してなく、「この先も現役選手を続けるための原動力」に他ならない。

「今は正直、この先や引退後のことはほぼ考えていません。サッカー、スポーツというふたつのキーワードには携わって生きていこうとは思っていますが、基本は、今日の課題を明日の練習でどう克服できるか、くらいしか頭にないです。

『ひとつでも高いステージでプレーしたい』『そこで自分の力を試したい』という目標はあるけど、今の自分が動かせるのは、あくまで直近の10秒後、1分後、1時間後に何ができるか、何をするかだけ。それが結果として、週末の試合や今後の自分につながっていくはずですしね。だからこそ、経験はあってもフレッシュに、知識はあっても頭でっかちにならず、今やるべきことを見逃さずにやり続けようと思います」

 今シーズンも残すところ、あと1カ月。スペインに渡ってから毎年、単年で契約してきたため、現時点では来シーズンの去就は決まっていない。18チーム中、5チームが自動降格する4部リーグにあって、アレナスは現在12位。今は残留争いから抜け出すことに気持ちを注いでいる状況だ。

 もっとも"一周まわった"男に、ナーバスな空気は微塵も感じられないが。

「スペインに来て昇格争いは経験したけど、残留争いの経験はないから。いやぁ、面白くなってきた!」

 経験の詰まったフレッシュさと感謝を胸に、今日を戦い抜き、明日につなげる。決して簡単ではないそのことを、変わらない熱量で続けられる愚直さと強さが、丹羽大輝のサッカー人生を今も前へ、前へと進めている。

(おわり)

丹羽大輝(にわ・だいき)
1986年1月16日生まれ。大阪府出身。ガンバ大阪のアカデミー育ちで、2004年にトップチーム昇格。当初はレンタル移籍を繰り返して、徳島ヴォルティス、大宮アルディージャ、アビスパ福岡でプレー。2012年にガンバへ復帰。2013シーズンからスタメンに定着し、2014シーズンにはチームの三冠達成に貢献した。翌2015年には日本代表にも招集された。その後、2017年にサンフレッチェ広島へ完全移籍し、翌2018年にはFC東京へ。そして2021年5月、スペイン4部のセスタオ・リーベル・クルブへ完全移籍。現在は、同じスペイン4部のアレナス・クルブ・デ・ゲチョでプレーしている。

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