38歳の丹羽大輝、スペイン4部でプレーする日々に「今日もサッカーができる。その事実に、自然と心が踊る」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 チームスタイルに対しても同じで、プロの世界に生きるからこそ、どんなスタイルも厭わず、与えられる役割、求められるプレーにただ懸命に向き合っている。

「もちろん、自分の好きなスタイルと合致する監督と仕事ができたり、心からリスペクトできる監督に出会えれば理想です。でも、そんな巡り合わせは奇跡に近い。

 ですから、どんなサッカー、監督に出会おうと『ああ、こういう監督もいるのか』『こんなサッカーもあるんだ』と、新たな発見、出会いとして素直に受け入れます。仮に『自分はこういうプレーをしたいのに、チームのスタイルに合わない』と思ってプレーしていたら、きっと躍動できないですしね。

 サッカーって、やっぱり自分自身が躍動するというか、心が躍るようなワクワクした感覚でプレーしていないと、観ている人のワクワクも引き出せないと思うんです。だからこそ、今もどんなプレーをするか以前に、まず自分の心が躍っているかを大事にしています」

 そして、その考えが自身のキャリアを支えてきた要素かもしれないと言葉を続ける。

「キャリアを重ねるほど、いろんなことが見えて、いろんな知識も増えて、欲が出るものですが、プロは応援してくれる人がいて、バックアップしてくれている企業があってこそ戦える。そのことへの感謝を忘れなければ、今日もサッカーができる、仲間と週末の試合を目指せる、という事実に自然と心が躍ります。このマインドが自分のなかからなくならない限りは、現役選手でありたいと思っています」

「一周まわってフレッシュに」というマインドは、実はコンディションづくりにも活かされている。若い頃から自主トレにおいても、いろんな試行錯誤を繰り返しながら、自身の体への投資を続けてきた丹羽だが、キャリアを重ねた今もその試行錯誤に余念がない。

「この歳になると、みんな維持ばかり心掛けるようになるけど、僕はその逆。やり込むことしか考えていません。実際今も、この走り方がいいかな、この蹴り方はどうかな、他にいいトレーニングはないかな、って常に自分に問いかけながら、いろんなことにチャレンジしています。去年、走り方を変えたのもそのひとつ。おかげでスプリント時のマックスのスピードは今、キャリアベストです。

 食事もこれまで、食べ方や食べるタイミング、食べるものの工夫を、おそらく何千回も試してきたのに、いまだにパスタと白米を食べる比率を変えたり、フルーツを食べる量を調整したり、細かくいろんなことを試して、それによる体の変化に耳を傾けています。そういう取り組みのせいか、面白いことに、20代の時より試合後の疲労感も......強がっているわけではなく、マジでないです(笑)」

 今年に入って、練習前、練習後、そして就寝前と1日3回プールに入って筋肉を緩めるようにしているのも、新たな取り組みだ。アレナスを含め、4部のクラブの多くが人工芝のグラウンドを利用することによる体のダメージを取り除くためだという。

「日本にいるときは練習後、リカバリーを目的にプールに入っていたんですけど、感覚がすごくよくて。その経験をもとに、練習前にも入ってみたんです。そうしたら、一般的には練習前は筋肉が緩むからあまりよくないと言われていたのに、思いのほかフィーリングがよく、練習中に体がすごく軽く感じられるようになった」

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