バルサの末裔シャビを苦しめた「悲痛な縛り」6月を待たず最悪のエンディングも (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「猛毒」をくらったクラシコ】

 攻守の両輪が機能しなくなったバルサは、悲劇的な撃ち合いの末に敗れる試合を繰り返している。その点では「攻撃こそ防御なり」の末とも言え、皮肉にもバルサらしさが見える。しかし、無理にボールをつないで、相手のカウンター戦術に叩きのめされる始末だった。

 なかでも、年始のスーパーカップでレアル・マドリードにコテンパンにされた敗戦が大きかった。

「忘れられない試合は、2004年の(サンチャゴ・)ベルナベウでのクラシコかな」

 現役時代のシャビにインタビューした時、彼は人生最高のゲームについて、アウェーでのレアル・マドリード戦を挙げ、こう語っていた。

「終了3分前のゴールで僕らが勝ったんだけど、ゴールが入った瞬間は今も忘れられない。ほんの何秒だが、スタジアムが静まり返った。それまでの騒ぎが嘘のように、世界から一瞬のうちに人が消えてしまった錯覚を受けた。スタジアムが空っぽになったんじゃないか!って。僕らが我を忘れたようにゴールを祝って抱き合っていると、野次とブーイングの嵐になったんだけど、ゴールが決まった瞬間、確実に世界は止まっていた」

 クラシコのゴールはアドレナリンを噴出させる。選手はその快感を忘れない。逆に、負けた場合は猛毒になる。

 民族的に圧迫された歴史を生きてきたバルサは、マドリードを叩き潰す反逆の精神を持って戦うようになった。それを天才ヨハン・クライフが「スペクタクルの追求」という境地に置き換えた。シャビはバルサスタイルの末裔と呼ぶにふさわしい。

 しかし現在の陣容で、バルサスタイルの実現は難しいだろう。メッシも、ブスケッツも、そしてシャビもピッチにはいないのだ。

「バルサのスタイルは変わらない。それは監督次第ではないんだ」

 現役時代のシャビの声は確信に満ちていた。

「カンプ・ノウの観衆は伝統に背くことを許さない。1-0で逃げ切る勝ち方は絶対に認めてもらえないし、そんな采配を振るう監督が来たら、選手よりもファンが許さないだろう。極端だけど、勝利そのものよりも、ボールを支配して攻めるという内容が重んじられるのさ。パスミスを誘ったほうが効率はいいのに、僕らは自分たち主導で攻める。この概念はクライフが確立したもので、もう誰も変えられないんだ」

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