2023サッカー界7大ニュースをブラジル人記者が選ぶ 「チーム史上最高のファウル」やメッシ、なでしこ、サウジアラビアの話題など

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 2022年はクレイジーな年だった。カタールW杯は史上初めて6、7月ではなく、年末に行なうことに成功。プレミアもリーガもセリエAも、ブラジルやアルゼンチンも、世界中が国内リーグを変則スケジュールで開催しなければならなかった。当時のイタリア代表の監督で、現サウジアラビア代表監督のロベルト・マンチーニはその状況を「サッカーという川の流れが変わった」と表現していた。

 2023年も、それに負けず劣らずいろいろなことが起きた。年の最後に、主としてビッチの外で起きた2023年の世界のサッカー界の出来事をカウントダウンしていこう。

リオネル・メッシが8度目の受賞をしたバロンドールの授賞式 photo by AP/AFLOリオネル・メッシが8度目の受賞をしたバロンドールの授賞式 photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る●政治に巻き込まれたU-20W杯

 まずは5月にアルゼンで行なわれたU-20W杯。もともとの開催地はインドネシアだったが、インドネシアはイスラエルを自国内でプレーさせることはできないとして、イスラエルが組み合わせ抽選会に参加することを拒んだ。もちろん、これはガザで戦闘が始まるよりずっと前のことだ。

 イスラエル代表は2021年のU-19ヨーロッパ選手権で決勝に進出し、U-20W杯行きを決めていた。イスラエルが参加するのは8カ月も前からわかっていたことだった。困惑したFIFAは、開幕直前になって開催地をインドネシアからアルゼンチンに変えた。おかげで短パンとサンダルでバリ島に観戦に行こうと思っていた人々は、冬のアルゼンチンに行かなければならなかった。

 しかし、話はここで終わらない。イスラエルを参加させずに開催地を返上させられたインドネシアが、当初はペルーで行なわれる予定だったが、インフラ整備が間に合わないという理由で撤回された11月のU-17W杯開催という"贈り物"をFIFAからもらったのだ。U-17W杯にはイスラエルはいない。安心してインドネシアで開ける。FIFAはサッカーに政治を持ち込むことを禁止している。しかし、実際のところは自らそれに屈したというわけだ。

●女子W杯で拍手喝采!なでしこジャパン

 W杯と言えば、忘れてはいけないのはこの夏にオーストラリアとニュージーランドで行なわれた女子W杯だろう。32チームが集結し、女子サッカー史上、最大規模の大会となった。グループステージでは126のゴールが生まれたが、3戦すべてに勝利したのは3チームのみ。そのなかで無失点11ゴールと最高の成績をあげ、世界中のファンから拍手喝采を浴びたチームがあった。それはアメリカでもブラジルでもスウェーデンでもない。日本だ。

 選手、ジャーナリスト、サポーター......グループステージの終わりには誰もが同じことを言っていた。「日本はこのワールドカップで最高のチームだ!」と。そして当の日本にこの興奮があまり届いていないと知り、筆者は驚いた。

 しかし、日本は本当に自分たちのプレーをしなければならない時に「自分たちはできる、自分たちには強さと力がある」ということを忘れしまったかのよう見えた。これはとても残念なことだった。元日本代表の宮間あやは、日本が準々決勝で敗退した後のインタビューでこう語った。

「あの時、日本は真に美しいサッカーをしなければならなかった。しかしできなかった。勝利のメンタリティが足りなかった」

 次回は、こうした経験を経て強さを自覚したなでしこジャパンに期待しよう。

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