低迷バルサ シャビ監督解任論も出るなか18歳のブラジル代表FWは救世主になれるか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【特別だったロナウジーニョ】

「ブラジル人は陽気さで、ファンの声援を自分のエネルギーにできる。その共鳴が、スペクタクルを望むバルサとフィットした」

 バルサの下部組織ラ・マシアで育ったブラジル人で、イタリア代表でも活躍したチアゴ・モッタ(現在はボローニャの監督)は、かつてそう説明していた。2004-05シーズン、バルサは覇権を取り戻したが、ブラジル人選手が主軸だった。ロナウジーニョ、モッタだけでなく、デコ(ポルトガル国籍を取得)、ベレッチ、シウビーニョ、エジミウソンがいた。

「ブラジル人の中でもロニー(ロナウジーニョ)は特別さ。例えばエラシコ(ボールを一度アウトサイドでこねてから内側に切り返す)というフェイントがあるじゃない? それをできるブラジル人選手は多いけど、失敗するのが怖いし、練習場だけ。でもロニーは平然と試合で使っていた。観客が喜ぶのを知っているからで、成功すると彼自身も気分が乗る。その光景はひとつの奇跡だった」(チアゴ・モッタ)

 そしてブラジル人は、もうひとつ副産物をバルサにもたらした。

「ブラジル人は能天気に見えて、勝利への執着心は相当なもの」

 そう語っていたのはドリームチームの一員で、2003年から08年までバルサのコーチを務め、2011年から15年までバルサBを率いたエウセビオ・サクリスタン・メナだ。

「ブラジル人選手は友人同士で騒ぐのが好きで、"遊び人"に見えるかもしれない。でも、相当な負けず嫌い。私は現役時代にロマーリオとチームメイトでしたが、勝利への欲求は凄まじかった。ロニーとロマーリオは性格こそ違うが、行き着くところは一緒。勝利へのこだわりが周りとの差を生み出しているのです」(エウセビオ)

 まさに、クレ(バルサファンの総称)がロッキを待望する理由だ。

 バルサは後がない。ラ・リーガでは首位争いから脱落の危機にあり、CLベスト16ではナポリとの対戦が決まった。

 ロッキは12月27日、バルセロナに到着した。バルサにとって遅れて届くクリスマスプレゼントになるか。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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