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谷晃生がベルギーで「想像していた以上」の過酷な日々 ビザに振り回され、選手登録は遅れ、右足首のケガは「自分で治した」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 実際、イレギュラーなことが起きることも覚悟のうえで海を渡っていたこともあり、その時期はまだ、「うまくいかないことも面白い」と自身が置かれている状況を楽しめていたという。チームメイトのほとんどが話すのはフランス語とオランダ語だったため、当初はコミュニケーション面での苦労もあったが、そのつど、自身が変わることで適応も求めてきた。

「今でこそ慣れましたけど、最初は『あれ? 英語を勉強してきたのに、まさかの英語じゃない!?』と驚きました(笑)。少しネジを外し気味でテンション高く入るくらいでちょうどいいかなって思っていたのに、『そもそも英語じゃないやん!』と。

 チームメイトはみんな優しく、僕と話す時は気を遣って英語で話し掛けてくれていたんですけど、それ以外はほとんどフランス語かオランダ語ですから。となると、雑談や他愛のない会話が理解できず、自分との会話以外からチームメイトのことを知ることができなかったので、そこは難しかったです。

 なので、チームメイトや現地で知り合った方たちに食事やホームパーティーに誘われたら断らないと決めて、積極的に参加するようにしていました。僕はひとり暮らしなので、家にいたら日本の友だちと連絡を取りがちになるけど、そういう場に出掛けていけば必然的に言葉を話すようになるので。

 もともとの性格的には知らない場所に積極的に飛び込んでいくようなタイプではなかったですけど、今ではチームメイトを介して知り合った他チームの選手の彼女のバースデーパーティーにも参加するほどで......。日本にいた時の自分では考えられない行動をしています(笑)」

 そんなふうに言葉の上達を意識したのは、海外でプレーするにあたり、ポジション柄、改めてプレーのディテールを事細かに言葉で伝える必要性を実感したからでもある。

「プレー中は、使うフレーズがほぼ決まっているので、必要最低限の単語を話せればそれで済むし、監督も英語なので困ることはないですけど、シーンごとに、瞬時に細かなディテールを伝えるには......たとえば、『ここで相手がボールを持っている時には、こっち側から体を寄せてコースを切ってほしい』など、的確に味方にコーチングをするには、やっぱりGKは改めて言葉が大事だな、と。

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